1999 Fiscal Year Annual Research Report
情報・ネットワーク産業の競争・規制の理論・実証研究:ユニバーサル・サービス政策を中心に
Project/Area Number |
11730039
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
依田 高典 甲南大学, 経済学部, 助教授 (60278794)
|
Keywords | 産業組織論 / 電気通信産業 / ネットワーク・エコバックス / ネットワーク外部性 / デファクト標準 / アクセス・チャージ / ユニバーサル・サービス / 複雑系 |
Research Abstract |
電気通信産業は1980年代の規制緩和・自由化の流れを受けて、理論と政策ともに大きな刷新を余儀なくされました。電気通信産業には、大きく分けて二つの特徴があります。第一は、供給側における規模・範囲の経済性です。つまり、電気信号の交換や伝送のために巨大な固定資本設備を必要とする産業であるために、その平均費用は生産量に応じて逓減していきます。特に、市内設備はボトルネック独占という性質を持つので、他事業者は地域独占である電話会社(日本ならNTT)とネットを接続しなければ、最終的サービスを提供できません。これが最近巷では接続料金問題として大きな社会問題となっています。第二は、需要側におけるネットの外部性です。つまり、沢山の人が使えば使うほど、そのサービスの魅力は高まるので、一度デファクト標準を獲得したブランドや企業が容易にその支配的地位を譲り渡すことはありません。その結果、第一の特徴と相まって、従来無かったような反競争的な諸問題を引き起こすことになります。現在、米国の法廷で争われているMicrosoft社裁判はその代表例です。以上、規模・範囲の経済性とネットの外部性という二つの特徴は、従来の経済学の見直しを余儀なくさせています。伝統的な経済学はいわゆる収穫逓減的性質を仮定して理論が構築させていました。つまり、供給側の生産も需要側の効用も初期値の揺らぎに対して安定的な収束性を確保できるような命題が経済学の中心を占めていました。ところが、新しい二つの特徴はいずれも収穫逓増的性質を意味しますから、その均衡は極めて不安定であり、局所的な初期条件が大局的な構造に影響を与えることになります。となると、均衡は複数あり、しかもその近傍の振る舞いは極めて複雑になりますから、数学的な解析では限界があり、コンピューターを使ったシミュレーション分析が非常に重要になることが判りました。
|
-
[Publications] 依田高典: "ネットワーク外部性の経済理論(前)"経済セミナー. 537. 78-86 (1999)
-
[Publications] 依田高典: "ネットワーク外部性の経済理論(後)"経済セミナー. 538. 90-98 (1999)
-
[Publications] 依田高典: "ユニバーサル・サービスの経済理論"経済セミナー. 540. 100-108 (2000)