1999 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本の高度経済成長と消費社会の発展-化学品と家電製品を中心に
Project/Area Number |
11730046
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
石井 晋 学習院大学, 経済学部, 助教授 (90296418)
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Keywords | 大衆消費社会 / 経済システム / 貨幣コード / 高度経済成長 |
Research Abstract |
本年度は、高度経済成長期における消費者行動の変化、流通システムの変化等、大衆消費社会化現象に関連する資料収集と整理、及び先行研究の検討に専念した。資料収集に関しては、大阪商工会議所、東京商工会議所、通商産業省図書館等に残された種々の調査資料及び広告資料や化学会社の一次資料を収集した(複写あるいは、デジタル・カメラで撮影し、PCを通じ、MOディスクに保存した-これらの設備機器を購入)。 また、大衆消費社会化に関する、経済学・社会学等の関連文献・書籍を購入して検討した結果、社会システム論における「経済システムの分化」という論点の重要性を認識した。「経済システム」とは、「貨幣を支払うか否か」という選択を二元化された一つのコードのみによって取引の連鎖が成立しているシステムであり、長期的にはそれが他のシステム(例えば、相手との親しさとか、あるいは何らかの「権力」に対して逆らえないから、などといった理由によって取引が成立するようなシステム)から分化してきたものと考えられる。 高度経済成長期における種々の新たな商品の出現過程で、最も他のシステムへの依存が大きかった消費行動においても、「経済システムの分化」が進んだことが、上記の収集した資料において、ある程度は確認することができた。しかし、まだ資料は不十分であり、また、「経済システム」が分化したとして、他のシステムにどのような影響を与えているかを十分に検討できていない。また、他のシステムに影響を与えたとして、経済システムがどのような反作用を受けてきたのかは不明である。当時、「流通革命」論が唱えられつつも、それが必ずしもスムーズには進まなかったことを提起するならば、「経済システムの分化」もまた、さまざまな抵抗を受けたことが示唆される。これらを今後の研究計画の中心課題とする予定である。
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