1999 Fiscal Year Annual Research Report
代議制民主主義における財政政策と政治過程の関係についての経済分析
Project/Area Number |
11730048
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
土居 丈朗 慶應義塾大学, 経済学部, 専任講師 (60302783)
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Keywords | 中位投票者 / 地方財政 / フライペーパー効果 / 社会資本 / 所得分配 / スピルオーバー効果 / 地方公共財 / 知事 |
Research Abstract |
わが国の地方財政における政治の影響を計量分析した論文として、"Empirics of the Median Voter Hypothesis in Japan"を執筆し、学術雑誌Empirical Economicsに掲載された。この論文では、日本の都道府県財政において中位投票者仮説が成立することを示した。その含意を、地方政府に裁量の余地が少ないわが国の地方財政制度の下で、制度的、政治的な観点から整合的に説明すると、次のようになる。地方財政制度が中央集権的であっても、地方政府の首長(知事)が選挙で多選されている現状と照らし合わせれば、中央政府が地方歳出の規模をその地域の選挙結果(中位投票者の意向)を考慮して政府間補助金を用いて財政運営をしていたと解釈できる。また、この解釈が妥当であることを計量経済学的に明らかにした。 さらに、わが国の都市財政における分析として、「日本の都市財政におけるフライペーパー効果とスピルオーバー効果」と題する論文にまとめ、第3回公共選択学会大会で報告し、学術雑誌『三田学会雑誌』に掲載される(予定)。この論文では、わが国の都市財政において、国からの使途を特定しない補助金(地方交付税)が、地方歳出に不必要に貼りついてしまい、民間消費と財政支出の配分を歪めてしまう効果である、フライペーパー効果を、他の都市が支出する地方公共財や国・都道府県が支出する公共財の便益のスピルオーバー効果を考慮に入れた上で計量分析したものである。分析結果は、スピルオーバー効果を考慮した上で、不交付団体や地方交付税が固定資産税収よりも少なく交付されている交付団体ではフライペーパー効果は認められないが、地方交付税が固定資産税収より多く交付された交付団体で認められた。 また、社会資本を含む生産要素への所得分配構造を分析し、「社会資本をめぐる要素間所得分配」にまとめた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 土居 丈朗: "Empirics of the Median Voter Hypothesis in Japan"Empirical Economics. 24. 667-691 (1999)
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[Publications] 土居 丈朗: "社会資本をめぐる要素間所得分配"社会科学研究. 51(近刊). (2000)
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[Publications] 土居 丈朗: "日本の都市財政におけるフライペーパー効果とスピルオーバー効果"三田学会雑誌. 92(近刊). (2000)
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[Publications] 土居 丈朗: "地方財政の政治経済学"東洋経済新報社(近刊). (2000)