1999 Fiscal Year Annual Research Report
金融資産選択行動のマクロ的構造分析-ベイズ型コウホート分析の家計データへの適用-
Project/Area Number |
11730055
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Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
山下 貴子 流通科学大学, 商学部・流通学科, 講師 (70309491)
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Keywords | コウホート分析 / 少子高齢化社会 / 金融資産選択 / 貯蓄動向調査 |
Research Abstract |
家計における金融資産選択行動のマクロ的な構造について、『貯蓄動向調査』の1970年から1998年のデータを使用し、ベイズ型コウホート分析法を用いて分析を行った。世帯主自身の出生コウホート(「世代」)、世帯主が加齢してゆく過程(「年齢」)、その背景となる「時代」要因に分離してその有効性を確認し、三つの効果が家計における「金融資産選択」にもたらす影響について解釈を進めた。 大部分の金融資産において年齢効果の影響が最も強いことが示されたが、「有価証券」のうち「株式」「株式投資信託」は時代効果、「債券」「貸付信託」は世代効果が強いという結果を得た。これら金融資産について世代効果を見ると、大正生まれ世代が積極的に危険資産を購入しており、この世代は他の世代に比べてリスク許容度が高いことが示された。 86年以降は、株高に誘発された資産シフトが起こり、時代効果が顕著に現れたといえる。逆に、91年以降は、低金利局面で短期の金融商品に資金を待機させておこうという姿勢が見られる。「安全性」の高い資産を中心に堅実に資産を積み上げていこうという意識の広がりが見られる。定期性預金のコウホート分析結果を見ると、若い世代で銀行よりも郵便貯金志向傾向が見られた。 負債を見ると年齢効果が大きく、35歳以降「住宅・土地のための負債」が増えている。時代効果をみると、97年には消費税率の引き上げや住宅の販売価格の下げ止まりなどにより少し落ち込んでいる。「住宅金融ローン(名目)」と時代効果を比較すると、金利の低下局面には借入の増加が観察され、金利選好の強さを示している。 本研究では、利用可能なデータが1998年までであったため、引き続き研究を行い、1999年以降のデータを加えることによって、金融ビックバン等による環境の変化が家計の金融資産選択に及ぼす影響をさらに詳細に分析してゆきたいと考える。
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