1999 Fiscal Year Annual Research Report
国立大学との産学共同を通じた研究開発活動の実態調査及び実証研究
Project/Area Number |
11730056
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
綿引 宣道 弘前大学, 人文学部, 助教授 (90292135)
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Keywords | 産学官共同 / TLO / 地域共同研究センター / 研究開発 / 技術移転 / コミュニケーション |
Research Abstract |
産学共同に関する事例研究に入る前に,予備調査として産学官共同の歴史的変遷について文献研究を行った。 産学官共同の研究開発について,日英米の3国の特許法や独占禁止法の改正など,国家的制度の変化と実際に行われたものとの比較を行った。 結論として,日本は明治以降一貫して政府主導で大企業を中心に共同研究を行ってきており,戦後も一時的に共同研究ができなかったが,その後独占禁止法を無視するような形で進められ,3国間でも非常に特異である。これに近いのが英国をはじめとするヨーロッパ諸国であるが,日本と異なり戦後から共同が本格的に開始されている。米国では,州立大学の設立時から実学を志向しており,技術移転が目的である。しかし,独占禁止法の関係から軍需を除いて工業分野での共同は原則行われていなかった。日本の半導体開発のように産学官の共同体は,米国の産業界を刺激し特許法・独占禁止法の改正(例えばBahy-Dole act)へと向かわせた。以上の点を論文で発表した。 実態調査では,東北地方を中心に地域共同研究センター,TLOと企業との仲介を行うテクノポリス財団にインタビューを行い,それをもとに店頭公開以上の企業約550社を対象にアンケート調査を行った。その結果に関しては,現在資料整理中のため論文での報告はしていないが,(1)大学と企業以外の仲介機能(例えばテクノポリス財団)を果たす組織の存在が大きな役割を果たしている。(2)共同研究形態としては,研究員を派遣しない分担型が多い。すなわち受託研究とほとんど変わらない形態である。(3)地域共同研究センターの専任教官に極度の負担を強いているなどがわかってきた。このままでは,付き合いでの中身のない共同研究ばかりとなり,教官の膨大な負担から近い将来に多くの地域共同研究センターでは機能が麻痺し,民間企業からの信頼失墜,それに続き全国的な共同研究数の減少は免れないであろう。
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