1999 Fiscal Year Annual Research Report
監査論から見たコーポレート・ガバナンス-日・独・米の比較を通じて-
Project/Area Number |
11730085
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Research Institution | Women's Junior College Tokyo Institute of Polytechnics |
Principal Investigator |
三原 園子 東京工芸大学女子短期大学部, 助教授 (90290030)
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Keywords | コーポレート・ガバナンス / 監査役会(監査役) / 独立取締役 / ドイツ / 監督 / 助言 / 監査 / 会社の利益(企業利益) |
Research Abstract |
ドイツにおける監査役会の取締役に対する監督について研究を行った。 日本コーポレート・ガヴァナンス原則策定委員会の最終報告では、「独立取締役」が取締役会の過半数を占め、将来的には現行の監査役会制度を廃止することを含めた提案がなされた。しかし、アメリカでも、純粋に株主の視点に立つはずの「独立取締役」は実際には株主からも独立しており、取締役会の中での独立取締役の割合が過半数を超えるとかえって業績が悪化すること等から、日本における監査役会の必要性を再確認した。 「会社の利益」を株主のみならずステークホルダー全体の利益と考えるドイツにおいて、監査役会が全社を代表すると見る全社代表説と、監査役会が株主、従業員、労働者代表という各集団の代表者であると見る利益代表機関説が対峙している。ここで、監査役会が取締役の監督を行う際に企業の計画機能に参加すべきかについての見解を比較検討した。初めて助言についての態度を表明したドイツ連邦最高裁判所の判決は、「日常的な助言」を肯定した上で、専門的なノウハウや知識を要する場合には監査役員と会社との間での報酬を含めた特別の契約が必要だとする。この他、監査役員としての報酬だけで会社のあらゆる助言を行うもののそれに対する損害賠償責任は負わないとする全社代表説と、監督者が経営に携わる危険性から助言に対して批判的な態度をとる利益代表機関説が対立する。1998年のドイツ商法改正で、企業計画についても監査役会が監督する旨が条文に明記された。日本法への示唆として、監査役会は商法上監督ではなく監査を行うので、たとえ日常的な監査を行う場合にも取締役が既に行ったことを事後的に監査すると解釈できる。 また、同年のドイツ商法改正で公認会計士が監査役会に必ず出席することで、連携による監督の効率性が高まったことは検討に値する。
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[Publications] 三原園子: "ドイツの株式会社における監査役会の実務"比較会社法研究(奥島孝康教授還暦記念)成文堂. 第1巻. 417-431 (1999)
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[Publications] 三原園子: "最近の日本における監査制度の変革の動向"東京工芸大学工学部紀要. 22巻2号. 68-74 (2000)
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[Publications] 三原園子: "ドイツ監査役会の計画機能への参加"早稲田法学. 75巻3号. 349-365 (2000)