1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11740081
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤家 雪朗 東北大学, 大学院・理学研究科, 講師 (00238536)
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Keywords | シュレディンガー方程式 / 準古典解析 / exact WKB法 / Langer modification / 球対称ポテンシャル |
Research Abstract |
球対称ポテンシャルに対するシュレディンガー方程式の散乱行列およびレゾナンスの準古典解析の研究を行った。特に原点の近傍でのWKB解析において、数学者および物理学者の間で長い間問題とされてきたいわゆるLanger Modificationをexact WKB法を用いて数学的な正当化に成功した。Exact WKB法とは、一次元シュレディンガー方程式の真の解とその漸近展開を複素領域において同時に与える方法である。 ポテンシャルが球対称であるような3次元シュレディンガー方程式は、解を球面調和関数を使って展開することによって、動径方向の変数rに関する正の実軸上の一次元シュレディンガー方程式に帰着させることができる。ただし実効ポテンシャルとしては本来のポテンシャルに遠心力ポテンシャルh^2l(l+1)/r^2(ただしhは規格化されたPlanck定数でここではsmall parameter、lは量子化された角運動量で正の定数)が付け加わる。この遠心力ポテンシャルが原点に2位の極をもつことがWKB解析を難しくする。実際散乱行列をexact WKB法を使って計算するためには、まず原点で正則な解をexact WKB解を使って表さなければならない。一方exact WKB解は、ポテンシャルの特異点および変わり点(ポテンシャルの値がエネルギーの値に一致する点)の近くでは漸近展開が一様ではない。今の場合、原点に特異点があるだけでなく、hが0に近づくとき原点に収束するような変わり点が存在するのである。 Langer modificationとは、遠心力項のl(l+1)を(l+1/2)^2でおきかえる操作のことで、最初にこの置き換えをしてから形式的にWKB法を適用すると、原点の近くで(遠くでは勿論であるが)正しい準古典第一次近似が得られることが知られていた。このことはLangerをはじめ、多くの物理、数学者によって、特殊なポテンシャルについて正しいことが確かめられてきたが、この度私はT.Ramondとの共同研究で一般の正則な、あるいは原点に1位の極をもつポテンシャル(クーロンポテンシャル)に対し、誤差項の評価を込めて厳密に正当化した。またこの結果を用いることによって、球対称ポテンシャルをもつ多次元のシュレディンガー方程式の散乱行列およびレゾナンスの漸近挙動を明らかにした。
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Research Products
(1 results)