2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11740081
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤家 雪朗 東北大学, 大学院・理学研究科, 講師 (00238536)
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Keywords | シュレディンガー方程式 / 散乱位相 / スペクトル密度 / Weyl公式 / exact WKB法 |
Research Abstract |
前年度,およびそれ以前の研究の一つの応用として,散乱位相の漸近解析を研究した. 散乱位相は,シュレディンガー方程式のポテンシャルV(x)が遠方で十分はやく減衰している時,散乱行列の行列式(絶対値1の複素数)の偏角を2πでわったものとして定義される.散乱位相ξ(E,h)はしたがってエネルギーEおよびプランク定数に由来する小さなパラメータhの関数である. 散乱位相は実はKreinの跡公式によって負のエネルギーEにも自然に拡張できて,そこでは固有値の個数関数に一致する.したがって散乱位相は連続スペクトルのスペクトル密度を与える関数であるということができる. スペクトル密度の研究は,1911年のWeylに始まる.有名なWeyl公式とは,R^dの有界領域ΩのDirichlet Laplacianの固有値の個数関数N(E)のE→+∞のときの漸近公式N(E)〜c_dVol(Ω)E^<d/2>である.類似の公式が外部問題やシュレディンガー方程式についても成り立つ.特にシュレディンガー方程式においては準古典極限,すなわちEはある有限区間に固定してhを0に近付けた時にも類似の漸近公式が"genericな"Eに対して成り立つことが知られている. 本研究では,逆にWeyl公式が破綻する場合を扱った.それは一次元(d=1)で,V^<-1>(E)が非退化なcritical pointすなわちV'(x)が消えて曲率が消えない点を含む場合である.このcritical valueをV_0とし,|E-V_0|=0(h)とする.このときV^<-1>(E)が一つのcritical pointから成る場合(I)と二つのcritical pointから成る場合(II)について,次のような結果を得た. まず(I)の場合,dξ/dEのh→0のときの漸近展開の初項は(1/πh)(log1/h)にcritical pointの曲率の逆数をかけたものに等しく,(II)の場合は,(1/πh)(log1/h)に二つのcritical pointの曲率の逆数の平均をかけたものと,実軸近くに存在する散乱極によって生成されるある振動する項との和に等しい. これらの結果は,exact WKB法による散乱行列の漸近展開の計算をもとに新たに得られたものである.
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