1999 Fiscal Year Annual Research Report
2次元外部領域における弾性体に関する方程式の解の漸近挙動
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11740084
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川下 和日子 (檀 和日子) 筑波大学, 数学系, 助手 (40251029)
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Keywords | 線型弾性方程式 / 等方的半空間媒質 / レーリー波 / エネルギー分布 / 減衰オーダー |
Research Abstract |
2次元外部領域における弾性体の方程式の初期-境界値問題について、線形化方程式の解の漸近挙動、および、対応する非線形方程式の解の時間大域的存在、漸近挙動を調べることを目的としているが、今年度は特に、弾性方程式の境界値問題の特徴といえる、レーリー波の性質を明らかにすることを目的とした。 境界のある領域で弾性方程式を考える場合、ノイマン境界条件の時には、境界上を伝わるレーリー表面波が生じることが知られている。この場合、境界付近に波が拘束される可能性があるが、外部領域の局所エネルギーの減衰オーダーを求めるにあたっては、このような場合を除いて考察するのが普通である。しかし、レーリー波を調べることは波動方程式にない弾性方程式の特徴を知るために重要であるので、まずは等方的な3次元半空間の媒質の場合に線形の弾性方程式を考え、その場合に現れるレーリー波のエネルギーの分布状況と、その時間についての漸近挙動について調べた。 半空間の場合、レーリー波の特異性は速さc_Rで境界に沿って伝わるので、エネルギーも同じように伝播することが予想され、今までにもそれに準じた結果を示した研究がある。しかし、今回の研究によって、初期データに空間遠方での減衰を仮定すれば、境界近くにエネルギーが集中する様子が、より精密に捉えられることがわかった。また、今までになされてきた研究と違う手段をとったため、初期データの台がコンパクトな場合には、エネルギーの集中しない領域に対してのエネルギーの時間減衰のオーダーを得ることに成功した。一方、初期データの取り方によっては、境界から一定距離だけ離れた領域においてであっても、領域と境界との距離に依存する値で、レーリー波のエネルギーが一定オーダー以上分布し、時間がたっても0へは減衰しない例があることを指摘できた。これは、一般には、境界からある程度離れた領域にもレーリー波のエネルギーがしみ出すとみられることを示している。
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