1999 Fiscal Year Annual Research Report
可視・赤外・ミリ波観測による低温度星の質量放出の研究
Project/Area Number |
11740127
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
泉浦 秀行 国立天文台, 岡山天体物理観測所, 助手 (00211730)
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Keywords | C_2 / Swan band / circumstellar / carbon star / mass-loss |
Research Abstract |
研究計画にあるように、本年度は国立天文台岡山天体物理観測所188cm望遠鏡のクーデ焦点にエシェル型高分散分光器を完成させ、実際に既存の分光器に比べ分解能で3倍、同時観測波長域で10倍観測性能を向上させた。そして研究計画に従い、この高分散分光器に適合したイメージローテータの設計および組み立て調整方法の検討を進めた。また、組み立て調整時に必要となるオートコリメータと工具鏡の購入を進めた。 さらに、当初の研究計画通りイメージローテータの完成を待たずに、天頂角の小さいところで観測できる低温度星の観測を推進した。今年度は、縁赤外線の観測から非常に広がった中空のダストシェルを持つことが知られている赤色巨星である炭素星YCVnを中心に、4000〜5000Åの比波長分解能10万のスペクトル観測を進めた。その結果、星周外層に起因すると考えられるC_2分子のバンド吸収線構造の発見に成功した。今回の検出は炭素星の光学域スペクトルにおける世界で初めてのものであるとともに、以下に述べるように今後多方面の研究へと発展が期待される。たとえば、炭素同位体を含む分子の吸収線群も同時に見えていることから、炭素同位体比の新しい決定方法となる。また、回転準位間の分布から回転温度が求まり、物理的な環境を推定することが可能となる。さらに、大気に由来する吸収線スペクトルとは異なり、天体ごとにはっきりした見え方の違いがあることが分かり、赤外線観測のダストシェル、ミリ波観測のガスシェルの情報と比較することで、AGB星段階の質量放出の非対称性について調べる新しい手段となる。さらに同様の研究を、酸素過多なM型星におけるTiOバンド、S型星におけるZrOバンド、あるいはさらに波長の短い領域にある様々な分子の吸収線バンドについて進めることで、星周外層のガスの状態を多面的に研究する手段を提供できる可能性がある。
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