1999 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴によるペロフスカイト型チタン化合物のモット転移近傍の金属相の研究
Project/Area Number |
11740181
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古川 裕次 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50280863)
|
Keywords | 金属-絶縁体転移 / 強相関電子系 / 核磁気共鳴 / 核スピン格子緩和時間 |
Research Abstract |
ペロフスカイト型構造のLa_<1-x>Sr_xTiO_3は、強い電子相関の効果によりモット転移点に向かってキャリアの有効質量が発散的増大を示すことが知られている。本研究では、この系の電子相関の特徴を微視的に明らかにする目的で^<47/49>Ti及び^<139>Laの核磁気共鳴(NMR)を行った。 (1)Sr濃度の異なるすべての試料(x=0.05-0.8)において、^<47/49>Ti核のスピン格子緩和時間T_1は、^<Ti>(T_1T)=一定のコリンハの関係に従い、系が金属状態にあることが微視的にも明らかになった。Ti核のT_1がT_1T=一定の関係に従うことから、高温超伝導銅酸化物のCuサイトで観測されるような反強磁性スピンゆらぎの温度減少に伴う増大に起因した(T_1T)^<-1>のキューリーワイス的な温度依存性はなく、この系では、反強磁性スピンゆらぎの温度減少に伴う増大が認められないことが明らかとなった。 (2)Ti及びLa核の(T_1T)^<-1>のx依存性は、転移点近傍でどちらも顕著な増大を示すとともに、それぞれのx依存性がスケールしていることが明らかとなった。この結果はLa_<1-x>Sr_xTiO_3での動的帯磁率X"(q、ω)が、xの減少に伴い、強い電子相関により波数q〜0から反強磁性波数ベクトルのq〜Qまでの成分が一様に増大していることを示唆しており、この系では、inter-atomicな電子相関によるTi-3dスピン間の反強磁性スピンゆらぎは重要ではなく、single-site(intra-band)の電子相関が「モット絶縁体-金属」転移には重要な役割を果たしていることが実験的に明らかになった。さらに、高温超伝導銅酸化物における「電荷移動型絶縁体-金属」転移に向かって金属相でinter-atomicなCu-3dスピン間の反強磁性スピンゆらぎが増大するのと対照的であることが分かった。 以上の結果を論文としてまとめて報告した。
|