1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11740184
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柴田 尚和 筑波大学, 物質工学系, 助手 (40302385)
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Keywords | 重い電子系 / 近藤格子 / 朝永ラッティンジャー液体 / 動的相関関数 / 近藤絶縁体 / 密度行列繰り込み群 / 擬ギャップ / 近藤効果 |
Research Abstract |
重い電子系や高温超伝導体などの電子間の相互作用の効果が強い系を理解するためには摂動論的手法の限界を超えて物理量を精密に調べることが必要である。本研究の目的は近似理論を用いない計算物理的手法を用いることでこのような系における従来の近似理論の枠組みを越える予想外の現象を明らかにすることである。11年度の研究では密度行列繰り込み群と呼ばれる最近開発された変分関数を自動生成する精度の高い数値計算法を用い、重い電子系の理論的モデルである近藤格子模型の一次元での金属相の基底状態の励起の構造や帯磁率、比熱などの熱力学量、動的相関関数、準粒子状態密度等の温度依存性、ホール濃度依存性を調べた。その結果、絶縁相近傍の金属相での熱力学量の温度変化において、二つのクロスオーバーの存在が明らかになった。第一のクロスオーバーは帯磁率のピーク構造や準粒子状態密度、動的相関関数における擬ギャップの形成として現れ、伝導電子と局在スピンの間で形成されるスピン一重項形成に起因している。そのエネルギースケールは交換相互作用の大きさが伝導電子のバンド幅の約1/4以上の大きさの領域で、絶縁相でのスピンギャップの大きさにほぼスケールする。一方、低温で現れる第二のクロスオーバーは伝導電子と局在スピンの一重項形成から溢れたホール濃度に比例する自由度が低温で朝永ラッティンジャー液体を形成することで引き起こされ、そのエネルギースケールはホール濃度無限小の極限で消失する。このような結果は密度行列繰り込み群という新しい数値計算法により初めて明らかになった。
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[Publications] Naokazu Shibata: "Thermodynamics of doped Kondo insulator in one-dimension"Journal of the Physical Society of Japan. 68. 744-747 (1999)
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[Publications] Naokazu Shibata: "Dynamic Correlations in Doped 1D Kondo Insulator"Journal of the Physical Society of Japan. 68. 3138-3141 (1999)
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[Publications] 柴田 尚和: "密度行列繰り込み群で見る強相関電子系"日本物理学会誌. 55. 106-112 (2000)