1999 Fiscal Year Annual Research Report
極低温におけるナノ分子磁性体の磁気的量子トンネリング現象
Project/Area Number |
11740186
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 明 東京大学, 物性研究所, 助手 (10302639)
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Keywords | 磁性 / 微小磁性体 / クラスター / 量子トンネリング / 極低温 / マンガン / 分子磁性体 / 緩和 |
Research Abstract |
微小磁性体中の磁化の量子トンネリング現象について関心が集まっている。本研究の目的は、微小磁性体のモデル物質と考えられるマンガン高スピンクラスターの磁化トンネリングの機構を極低温の物性測定により解明することにある。これまでに報告されているクラスターでは、マンガン12核クラスターがよく知られているが、理論上はより少核のクラスターでも磁化量子トンネリングは観測されるはずである。研究の1年目である本年度は、ヘンドリクソン教授(カリフォルニア大学サンディエゴ校、アメリカ)らのグループから提供されたマンガン4核クラスターに対して磁気測定を行った。交流磁化率測定により、4Kから1Kまでの温度領域で磁化凍結現象が起こることが観測された。周波数依存性から磁化の緩和時間は熱活性型の振る舞いを示し、磁化凍結がクラスターの磁気異方性により起こっていることがわかった。さらに1K以下の極低温領域で磁化の緩和を直接観測したところ、0.5K以下の温度で緩和時間が温度に依存しないことを発見した。温度に依存しないことから、この緩和が量子トンネリングによるものだと結論できる。極低温で観測された量子トンネリングによる緩和時間は、マンガン12核クラスターで観測されたものよりもはるかに早く10000秒程度であった。この違いは、基底状態の総スピン量子数の違いによるものだと結論できた。以上をまとめると、マンガン4核クラスターにおいて磁化凍結および磁化量子トンネリングが生じることを新たに発見し、その緩和時間の定量的に測定することに成功した。クラスターサイズとトンネリング確率の関係を議論する上で、貴重な実験データを得たと言える。なお、本研究の結果は、低温の国際会議「LT21(フィンランド)」にて発表し、近く、雑誌Physica Bに掲載される予定である。
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