1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11740218
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中川 尚子 茨城大学, 理学部, 助手 (60311586)
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Keywords | 部分熱浴系 / エネルギーの遅い緩和 / タンパク質のエネルギー蓄積 |
Research Abstract |
ある種のタンパク質には、化学反応から得たエネルギーをその内部に長時間蓄積するメカニズムがあると考えられる。常温の熱浴下にありながら、過剰なエネルギーを散逸せずに保持する機能はどのように可能となるのか。本研究では、この問題に対し、ダイナミクスの立場から理論的示唆を与えることを目論んだ。 我々はモデル系として、振り子(双極子)の多体系を採用し、その一部だけが熱浴と接触しているとした。この設定は、タンパク質が球形で、熱浴(水溶液)との相互作用は外側の親水基によって担われることによる。 次に、この系が平衡状態にある時に、内部(熱浴に直接接触していない部分)に過剰なエネルギーを与え、そのエネルギーがどのような時間依存性を持って緩和するかを調査した。その結果、内部に置かれた過剰なエネルギーは非常に遅い緩和を示し得ることがわかった。エネルギー減衰の時間依存性によれば、対数的緩和と呼べる緩和の仕方である。これは、通常の指数的緩和とは全く異なる緩和則に従うことを示しており、同時に、内部に置かれた過剰エネルギー量の増加に対し、指数関数的にその蓄積時間(ここでは熱平衡へ緩和するまでの時間のこと)が増加することが示された。 この結果は、あるクラスのハミルトン力学系に普遍的に成り立つBoltzmann-Jeans conjetureと関連しているようである。つまり、本研究の結果は、熱浴と部分的に接触している場合も、この枠組が有効であることを示唆している。B.-J.conjetureは自然界に存在し得るような簡単な条件を満たせば実現するので、実際のタンパク質での長時間のエネルギー蓄積も同じ仕組みによって実現している可能性は十分にあろう。
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Research Products
(1 results)