2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11740220
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福島 孝治 東京大学, 物性研究所, 助手 (80282606)
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Keywords | モンテカルロ法 / 拡張アンサンブル / スピングラス / 臨界現象 |
Research Abstract |
前年度に引続き、「拡張アンサンブル法」のひとつである交換モンテカルロ法を用いてランダムスピン系の研究を行なった。本年度の実績は主に以下の2点である。 1:3次元イジングスピングラス模型の相転移 これまでに上記の模型は有限温度でスピングラス相転移を示すことがわかっていたが、一方で低温相で秩序変数が有限に残るのかどうかは不明であった。つまり、相転移はするものの低温相は非常に軟らかく、臨界状態が低温相の中まで続いているように見えていた。今回は、前年度に開発したドメイン壁自由エネルギー計算法を用いて、この問題を調べた。我々は、低温相で自由エネルギー差がサイズとともに発散することを見付けた。このことは硬い相が実現していることを意味し、臨界状態が続くとする描像は当てはまらないことが初めて明らかになった。同時に有限サイズスケーリングにより転移点と臨界指数を評価した。 2:平均場スピングラス模型の有限サイズ効果 有限次元系のスピングラス相の性質に対する平均場描像とドロップレット描像の可否の巡る議論が10年以上も続けられている。その際には有限系のモンテカルロ計算が主な手段として使われているが、例えば平均場描像が有限系の計算でどのように見えるかは必ずしも自明ではない。我々は平均場描像が成り立っている系(平均場SK模型と平均場ポッツグラス模型)に対して、交換モンテカルロ法を用いて、その有限サイズ効果を調べた。ある種の物理量は、平均場描像でのレプリカ対称性の破れ方の違いに大きく依存することがわかった。また、これまで有限温度相転移はないとされている3次元ポッツグラスとその平均場模型の振舞いはかなり近い点があり、スピングラス相転移の有無について再検討の余地があることを指摘した。
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[Publications] K.Hukushima and H.Kawamura: "Replica-symmetry-breaking transition in finite-size simulations"Physical Review E. 62. 3360-3365 (2000)
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[Publications] N.Ito,K.Hukusima,K.Ogawa and Y.Ozeki: "Non Equilibrium Relaxation of Fluctuation of Physical Quantities"Journal of Physical Society of Japan. 69. 1931-1935 (2000)
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[Publications] L.W.Bernardi,H.Yoshino,K.Hukushima,H.Takayama,A.Tobo and A.ITo: "Aging of the Zero-Field Magnetization in Ising Spin Glasses : Experiment and Numerical Simulation"Physical Review Letters. 86. 720-723 (2001)
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[Publications] K.Hukushima: "Domain-Wall Free-Energy of Spin-Glass Models : An Extended Ensemble Approach"Computer Simulation Studies in Condesed Matter Physics (Springer Verlag). XIII. 137-152 (2000)