1999 Fiscal Year Annual Research Report
原子の光学的プローブを用いた超流動ヘリウムの量子物性の検出実験
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11740248
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
森脇 善紀 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (90270470)
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Keywords | レーザー分光 / 液体ヘリウム / 液体ヘリウム-3 / イオン原子衝突 / ヤーン-テラー効果 / イッテルビウムイオン / エキシマー / 低温 |
Research Abstract |
(1)液体He-4中でのYb^+イオンの分光 液体He-4中のYb^+の4f^<14>6s^2S_<1/2->6p^2P_<1/2>(Dl)遷移の放出スペクトルと、4f^<14>6s^2S_<1/2->6p^2P_J(J=1/2(D1),3/2(D2))遷移の励起スペクトルを実験により測定した。これらの遷移波長は、真空中での値にくらべブルー(青方)シフトしており、D2励起スペクトルは2つのピークに分裂していることが分かった。これらを理解するために、Yb^+がヘリウム中で真空の「バブル(泡)」の中に閉じ込められており、そのバブル表面が振動(球対称、双極子、四重極子振動モード)していると仮定した振動バブルモデルを用いて理論的計算を行った。その結果、ブルーシフトはこのバブルモデルによりよく説明でき、またD2励起スペクトルの分裂は、四重極子振動による動的ヤーン・テラー効果が主に寄与していることが分かった。 (2)Ca^+-He,Sr^+-He衝突における微細構造間遷移断面積の測定 Heとの衝突によるCa^+、Sr^+の微細構造(Ca^+:4p^2P_J状態、Sr^+:55p^2P_J状態)間の遷移断面積を室温で測定した。これらの断面積は微細構造間隔に対して指数関数となっていることが分かった。 (3)液体He-3中でのMg,Caの分光 液体He-3中でのMg:3s^<21>S_0-3s4p^1P_1遷移,Ca:4s^<21>S_0-4s4p^1P_1遷移の励起発光スペクトルを実験的に測定した。スペクトルの特徴は、(a)Mg,Caともに励起スペクトルは、液体He-4中のスペクトルよりも線幅が目立って狭く、また、遷移周波数のブルーシフトも小さい、(b)Mgの発光スペクトルでは同位体シフトが大きいが、Caではほとんどないことが分かった。(a)は液体Heの密度、表面張力などが同位体間で大きく異なっていることを考慮したバブルモデルにより説明でき、(b)は励起状態のMgがエキサイプレックスを形成していることを仮定することにより説明できる。この実験では液体Heの量子的・統計的な側面を液体He中の原子の分光により測定する事が示された。
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