Research Abstract |
本研究では,第1に,1999年の国際深海掘削計画第186次航海で得られた,1000万年間の三陸沖の海底コアについて検討を行った.このコアでは,中新世〜鮮新世初期に,自然ガンマ線強度,GRAPE密度,帯磁率,可視分光反射能に,非常に明瞭な堆積サイクルが認められる.この堆積サイクルは,珪藻化石層序によると,数万〜十万年の周期であり,地球軌道要素による太陽入射量変動(ミランコビッチサイクル)に相当することがわかった.今回取り扱った太平洋側のコアは,底棲生物による生物擾乱に非常に活発なため数百年〜数千年周期の変動は検出できなかったが,1000万年前の数万年周期の変動を連続的に検出できた.これは,今後,気候変動における北西太平洋の役割を考察する上で重要となる. 第2に,数百年〜数千年周期の急激な気候変動について考察するために,オホーツク海から得られた過去10万年間の海底堆積物コアについて検討した.海底コア中の,海氷が運搬した漂流岩屑量の変動を解析した結果,約1500年,6000年周期で,海氷が急激・突然に増加する変動が見いだされた.この変動は,10万年間の間何度も発生し,グリーンランド氷床コア中の寒冷化イベント,大気経由ダストの増加イベントや,北西大西洋でのハインリッヒイベントと非常に類似している.この結果は,現在も急激な寒冷化と関連した数年規模の北極循環流の役割が取りざたされているが,千年規模でも北極圏の大気循環の強化が,急激な寒冷化変動の引き金になっている可能性を示唆する. 今後,数百年〜数千年周期の急激な気候変動が,いつ始まったのか,どのような時期にどのような強さで存在するのか,を解くためには,北極周辺域において,堆積速度の早い,長く連続的なコア回収が必要であり,2003年から始まる統合深海掘削計画における研究に結びつけていく必要がある.
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