1999 Fiscal Year Annual Research Report
堆積相解析と小断層解析からみる前弧海盆の形成・消滅
Project/Area Number |
11740280
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒井 哲弥 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90303809)
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Keywords | 前弧海盆 / 堆積相解析 / 小断層解析 / 掛川層群 / 火山灰 / タービダイト |
Research Abstract |
今年度は掛川層群の主に中部(260-200万年前の地層)を主体として地層調査を行った.その結果,この層準に新たに10層の火山灰層を記載し,それが広域的に追跡可能であることを示した.また,それに沿って数10層のタービダイトを追跡,記載を行った.主に記載内容はタービダイトの厚さ,内部構造,古流向,そして各地点の情報を元に,1階の流れで堆積した層の形を復元した.こうしたタービダイトの層の形,古流向,海底地滑り堆積物から読みとれる古斜面のデータをもとにしてこの掛川層群中部堆積時,すなわち前弧海盆が形成されてから消滅に向かう過程での堆積盆の地形や沈降域の変遷を詳細に復元した.その結果,少なくとも掛川層群堆積時には堆積盆の外縁と中央部にそれぞれ地形的な高まり(リッジ)が存在することがわかった.沖側のリッジはすでに存在が知られているが,堆積盆の中央部にも小さなリッジが存在することは今回初めてわかった.これらリッジの消長はまず沖側のものが形成され,その後堆積盆中央部のものが形成された.さらに堆積物の厚さなどから堆定される堆積盆の沈降域の中心を層準ごとに推定し,それが時間と共に移動する過程も読みとれた.それによると堆積盆中央部のリッジによって隔てられた2つのトラフのうち,掛川層群形成初期には沈降の中心は沖側のトラフにあったものが,230万年前頃には陸側のトラフへ移動し,その沈降は200万年前ころにはほとんど停止したこともわかった.こうした地形変遷,沈降域の変遷は南東方向からの圧縮に伴う沖側のリッジの上昇で説明できるが,なぜ沈降が停止したかは明らかではない.こうした地形変遷などの具体的メカニズムを検討するため,さらには掛川地域を含めた伊豆周辺地域でのテクトニックな変遷を推定するために小断層解析を行うためのデータを収集した.解析は来年度に行う予定である.今年度の成果の一部はsedimentary Geologyへ投稿準備中である.
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