2000 Fiscal Year Annual Research Report
縁辺海域における陸起源物質の輸送-富山湾冷水湧出域におけるコロイドに関する研究-
Project/Area Number |
11740300
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
張 勁 富山大学, 理学部, 助教授 (20301822)
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Keywords | 富山湾 / 淡水性海底湧出水 / 水収支 / オオグチボヤコロニー / 深海性海底湧出水 / 黄色い変色域 |
Research Abstract |
本年度の研究のゴールは,富山湾の海面下に湧出する地下水系を特定し,湧出水の化学的特性を明らかにし海洋環境への寄与を正しく評価することにある。 まず,魚津周辺海域で湧水点を特定し,船を用いた湧水点周辺の広域調査と湧水点でダイバーの潜行調査を行った。その結果,湧出水の同位体比・主要化学成分は,周辺河川水や陸上の地下水に良く似た値を示し,採取された湧水はそれらと起源を同じくする扇状域の地下水であることが分かった。湧水のトリチウム濃度は3.9±0.7(TU)であり,地下に涵養してから10-20年の時間が経過している。また,安定同位体比から湧水の平均涵養標高は約850mであった。富山では降水量が蒸発量を上回っており,富山の主要河川の総流出量は,富山の平均的な年降水量に比べ小さい。河川水の海への流出量の約1/4の量に相当するこの不足量は,背後の山脈の被圧を受けて,約600mの海底から直接海洋に湧出している可能性もある。地下水は,栄養塩濃度が高く,その供給は海洋の生態系に大きな影響を与えることが考えられる。今後,湧水の量・質の時間的な変化を詳しく調査すると共に,他の湧出点の観測も行う予定でいる。 比較的水深浅い地下水の湧出現象とは別に,富山湾では,収束的プレート境界の沈み込み帯からの湧水活動の存在も示唆されていた。本研究では,「しんか 2000」を用いた富山深海長谷に関する地質学的な調査に併せて,深海性湧水の調査を行った。この観測で,邑知断層帯北東部海域で大規模なオオグチボヤのコロニーが日本海で初めて観測され,その採取にも成功した。また湾央の長谷でバクテリアマットと思われる黄色変色域も発見した。この微生物相は化学合成細菌やメタン酸化細菌が卓越することや,直下の堆積物間隙水中で硫酸濃度アノマリの存在も確認した。以上は,富山湾の深海底における冷湧水活動の存在の強い証拠と言える。
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[Publications] 竹内章,岡村行信,加藤幸弘,池原研,張勁,佐竹健治,長尾哲史,平野真人,渡辺真人: "日本海東縁,奥尻海嶺および周辺の大地震と海底変動"JAMSTEC深海研究. 16. 29-46 (2000)
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[Publications] Zhang.J.,and T.Ishii: "Rare earth and trace element biogeochemistry of white clam in Off Hatsushima cold seepage."JAMSTEC J.Deep Sea Res.. 16. 155-161 (2000)