1999 Fiscal Year Annual Research Report
クラスターイオンの光誘起蒸発過程の観測と単分子反応理論に基づいたモデルの検証
Project/Area Number |
11740329
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大橋 和彦 九州大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (80213825)
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Keywords | ベンゼン / クラスターイオン / 光誘起蒸発過程 / 振動励起 / エネルギー再分配 / 反応速度 / 単分子反応理論 |
Research Abstract |
ベンゼン2量体イオンおよび3量体イオンを赤外光(3448,3263,2945,2000,1539nm)により励起し、後続して起こる中性分子の蒸発過程の速度を決定した。また,実験により得られた速度を,単分子反応理論による予測と比較した。3448および3263nmの波長においては,ベンゼン分子のC-H伸縮振動が励起される。今回の実験条件下では、クラスターイオンの持つ内部エネルギーの大きさに分布があるために,集団中の全てのイオンが同じ速度で蒸発を起こすわけではない。しかし,理論計算との比較を簡単にするために、実測のスペクトル線形を再現する平均速度定数を求めた。2量体イオンについて得られた実験結果は,3448,3263,2945nmのいずれにおいても(7.0±2.0)×10^7s^<-1>であり,2000,1539nmにおいては(1.4±0.5)×10^8s^<-1>であった。3量体イオンについては,3448,3263,2945nmにおいて(1.0±0.5)×10^8s^<-1>であり,2000,1539nmにおいては(2.0±0.5)×10^8s^<-1>であった。単分子反応理論による計算結果は,例えば,2量体イオンの3448nmでの励起について,分子間振動のみを考慮した場合1.6×10^<10>s^<-1>であり,分子内振動も考慮した場合7.2×10^5s^<-1>であった。3量体イオンの3448nmでの励起については,分子間振動のみを考慮した場合1.8×10^<10>s^<-1>であり,分子内振動も考慮した場合7.2×10^8s^<-1>であった。2,3量体イオンのいずれについても,分子間振動のみを考慮した理論計算による蒸発速度は7 実測の値よりも大きくなっている。これらの結果は,分子間振動だけではなく,分子内振動もエネルギーの再分配に関与していることを示している。しかし,すべての分子内振動を考慮した理論計算では,2量体イオンの蒸発速度を2桁も小さく見積もってしまうことが判明した。
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