2000 Fiscal Year Annual Research Report
液体中に存在する中性およびイオン集合体の光解離ダイナミックス-時間分解振動分光法による研究-
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11740337
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
中林 孝和 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (30311195)
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Keywords | 時間分解ラマン分光法 / カチオン / 溶媒和 / 振動緩和 / 液体構造 / RISM-SCF法 / 酢酸 / クラスター |
Research Abstract |
液体中のクラスターの構造とダイナミックスを明らかにするために,本年度は以下の研究を行った。 1溶液中の光イオン化において,イオン対の生成,電荷分離,溶媒和,余剰エネルギーの散逸などの過程がピコ秒-フェムト秒で進行し,これらが,溶媒和イオンの生成効率,分岐比を支配する。本年度は,2光子励起で生成した様々な芳香族カチオンのピコ秒時間分解ラマンスペクトルを初めて測定し,カチオンの超高速緩和を検討した。ラマンバンドの波数シフトから得られるカチオンの振動緩和時間は中性分子と同じであり,約15ピコ秒であった。カチオンと溶媒との相互作用は,中性分子と溶媒よりも強いことから,この結果は第一溶媒和層に超高速エネルギー散逸が生じ,溶媒から溶媒へのピコ秒エネルギー伝達を振動緩和として観測していると考えられる。さらに約20ピコ秒の時定数で,カチオンのラマン強度の立ち上がりの遅れが観測された。このピコ秒変化は,振動エネルギーの散逸によって、周囲の溶媒が高温状態に達し,溶媒和構造が乱れることによって,ラマン強度が変化していると考えられる。この結果は,多光子で生成したカチオンは,約15ピコ秒の時定数で溶媒和されることを意味する。 2酢酸は気相中において環状二量体を形成し,その分子間水素結合は非常に強いことが知られている。しかし昨年度の研究において,酢酸は水溶液中においては,side-on型二量体を単位として存在していることを明らかにした。本年度は,電子状態理論と統計力学とを組み合わせたRISM-SCF法を用いて,水中における酢酸二量体のエネルギーと幾何構造を検討した。水溶液中において,side-on型二量体は環状二量体に比べて,約7kcal/molの安定化を溶媒和によって得ることがわかった。また,酢酸のカルボニル基と水分子との局所的な相互作用が安定化に大きく寄与していることが示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Y.Kodama,T.Nakabayashi,K.Segawa,E.Hattori,M.Sakuragi,N.Nishi,H.Sakuragi: "Time-Resolved Absorption Studies on the Photochromic Process of 2H-Benzopyrans in the Picosecond to Submillisecond Time-Domain"The Journal of Physical Chemistry A. 104・49. 11478-11485 (2000)
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[Publications] T.Nakabayashi,H.Sato,F.Hirata,N.Nishi: "Theoretical Study on the Structures and Energies of Acetic Acid Dimers in Aqueous Solution"The Journal of Physical Chemistry A. 105・1. 245-250 (2001)