2000 Fiscal Year Annual Research Report
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11740338
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
南部 伸孝 岡崎国立共同研究機構, 計算科学研究センター, 助手 (00249955)
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Keywords | HCP / 光解離過程 / 非経験的分子軌道法 / 非断熱遷移過程 / 振動回転準位 / 遷移状態 / 反応確率 / 量子ダイナミクス |
Research Abstract |
本年度は、以下の三つの研究成果を得ることができた。 (1)HCP分子の電子励起状態における前期解離過程の理論研究 平成12年度からHCP分子の電子励起状態の研究をはじめ、平成13年度は主に三重項状態の研究を行った。その結果は、実験値をほぼ再現していることから、Karnaらの理論研究では明確ではなかった帰属を正確に行うことができた。さらに、我々はこれらの電子励起状態上での振動回転準位の計算を行い、不明であった振動回転準位の完全に帰属した。一方、1^1Δ(2^1A'、2^1A")と1^1Σ^-(1^1A")状態への光遷移による前期解離過程HCP+hν→H+CPの機構を理論的に解明については、同対称性内における非断熱遷移結合項の計算とスピン軌道相互作用項の計算を行う必要があり、特にスピン軌道相互作用を考慮すると、実に16状態も存在するため、どのような過程を経て解離してくるか、方法論も含めた解明を必要とする。現在方法論も含めた研究を行っている。 (2)遷移状態波束計算による量子論的反応確率の決定 四原子系への第一歩として、この方法の開発に昨年から取り組みはじめています。正確な量子論的扱いによる遷移状態理論は、1974年のW.H.Millerによる理論構築[J.Chem.Phys.61(1974)1823]に始まります。それによるとある化学反応のミクロカノニカルな反応定数k(E)あるいは、温度依存性k(T)は反応確率(Cumulative Reaction Probability)N(E)により求めることができます。そこで、このN(E)を求める方法として、時間依存の方法である波束計算に着目しさらに、遷移状態付近のみで波束計算を行うことにより決定する方法を開発しました。現時点ではまだ一番簡単な系ではありますが、三原子分子の系である二分子反応O(^3P)+HCl反応に関する量子ダイナミクスと反応定数の理論的研究、J.Chem.Phys.113,227(2000)]に応用してみました。結果はかなり汎用性が高く、多原子系への応用が期待されるものとなっています。現在、四原子系である2OH(^2Π)→H_2O(^1A_1)+O(^3P)のポテンシャルエネルギー曲面の決定を行い、四原子系への応用を準備しています。
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[Publications] Skokov,Tsuchida,Nanbu,Bowman,and Gray: "A comparative study of the quantum dynamics and rate constants of the O (^3P)+HCl reaction described by two potential surfaces"J.Chem.Phys.. 113. 227-236 (2000)
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[Publications] Nanbu,Gray,Kinoshita,and Aoyagi: "Theoretical Study of the Potential Energy Surfaces and Bound States of HCP"J.Chem.Phys.. 112. 5866-5876 (2000)