2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11740340
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
西澤 潔 理化学研究所, 分子光化学研究室, 研究員 (50280730)
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Keywords | ラジカル対 / 磁場効果 / 時間分解過渡吸収 / 緩和機構 / パルス電磁石 / ビラジカル |
Research Abstract |
約30Tの磁場を発生することのできるパルス電磁石を併用した時間分解過渡吸収測定装置を用いて、ラジカル対・ビラジカルを経由する溶液中の光誘起化学反応に対する超強磁場効果の機構解明を目的として研究を行った。 1.カルボニル化合物の光誘起化学反応で生じるラジカル対の減衰速度の磁場依存性を超強磁場の領域まで測定した。ドデシル硫酸ナトリウムやポリオキシエチレンドデシルエーテルが水溶液中に形成するミセル中に溶解させたカルボニル化合物(ベンゾフェノン、デカフルオロベンゾフェノン、およびナフトキノン)が、紫外パルスレーザーによる光誘起化学反応により、ミセルから水素原子を引き抜き生成するラジカル対の存在量の磁場依存性を時間分解過渡吸収測定装置を用いて観測した。詳細に検討を行った結果、観測された超強磁場効果は、異方的な相互作用に基づく緩和機構だけで説明できることが判った。この実験結果と、スピンハミルトニアンの行列要素を用いた理論的計算結果を用いて、g因子の異方性や、回転相関時間を推定し、国際学会で発表を行った。 2.光誘起化学反応によって生成したビラジカルの収量・減衰速度に対する磁場依存性を超強磁場の領域まで測定した。ベンゾフェノンとフェノールが炭素鎖で結ばれた化合物が、紫外パルスレーザー光照射により分子内水素引き抜き反応を引き起こして生成するビラジカルの収量・減衰速度に対する超強磁場の効果の観測に成功した。観測された超強磁場効果は、Δg機構と緩和機構の組み合わせで説明できることが判った。また、Δg機構に基づく磁場効果の飽和現象を見出すことができた。
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Research Products
(1 results)