1999 Fiscal Year Annual Research Report
らせんの伸縮に基づくヘリカル超分子形成と機能・物性の研究
Project/Area Number |
11740353
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
大須賀 秀次 和歌山大学, システム工学部, 講師 (50304184)
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Keywords | ヘテロヘリセン / 光学活性 / らせん化合物 / P体 / M体 / 分子認識 / 包接化合物 / 光学分割 |
Research Abstract |
ヘリセンは芳香環がオルト位で縮環したらせん構造の化合物である。らせんの向きに基づくキラリティ(右巻き(P体)と左巻き(M体))を有するが、固定された剛直なπ電子系構造を持つため、安定でラセミ化が起こりにくいのが特徴である。特に官能基を有する光学活性ヘリセンは、不斉配位子・有機非線形光学材料・光学活性カラムの固定相などへの利用が期待される興味深い分子であるが、その反応や物性・機能性材料としての研究はほとんど未開拓の領域となっている。 申請者のこれまでの研究から、ヘリセン分子の置換基を変えるとそのらせん構造が大きく変化し、バネのように伸び縮みするということが明らかになった。そこで構造の変化と置換基との関連を明らかにするため、チアヘテロヘリセンの両末端の環を異なる長さのスペーサーによって架橋した環状化合物を合成した。環を架橋することによってヘリセンのらせんのねじれ角を固定することができるため、らせんのねじれ角とヘリセンの性質との関係を明らかにできると考えた。 合成した各環状化合物の構造をX線結晶構造解析によって調べたところ、ヘリセンの末端のチオフェン環の二面角はスペーサーの長さに応じて22.5度から59.2度まで大きく変化することが明らかとなった。またこれに伴って、比旋光度も980から1510まで大きく変化した。末端のチオフェン環の二面角が小さければヘリセンの構造の歪み方が小さくなり、ヘリセンの芳香族性が増大すると考えられる。末端のチオフェン環の二面角が22.5度と59.2度の二種類のヘリセンのUVスペクトルを比較したところ、15nm程度の長波長シフトが観測され、この考えが正しいことが裏付けられた。
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