1999 Fiscal Year Annual Research Report
光機能性分子と人口二分子膜フィルムを用いた生体内電子移動反応系の構築
Project/Area Number |
11740394
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Research Institution | Gunma National College of Technology |
Principal Investigator |
出口 米和 群馬工業高等専門学校, 助手 (20300535)
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Keywords | 光機能性分子 / アゾベンゼン分子 / ジアリールエテン分子 / 光異性化 / 人工分子膜フィルム / サイクリックボルタンメトリー |
Research Abstract |
本年度は光異性化する分子を人工二分子膜脂質中に固定化したフィルムで修飾した電極系の構築を目的として研究を行った。 実験には市販で比較的容易に入手可能なアゾベンゼン骨格を有する分子を主に用いて、電極上への人工二分子膜脂質との混合フィルムでの固定化を行った。電極上への混合フィルムの固定化は当初予測したよりも非常に困難であり、フィルムの経時変化による溶液中への溶解、電極上からの剥離の問題が明らかとなった。フィルムの溶解に関してはポリイオンコンプレックス型の人工二分子膜を用いることでかなり改善することが可能となった。電極上からのフィルムの剥離に関しては、当初使用していた金電極では改善することができなかったが、電極表面の疎水性が高いカーボン電極を用いることでこちらの問題も解決することができた。 引き続き、修飾電極のデバイス化のために、構築した電極系でのアゾベンゼン分子の電子移動反応と光異性化挙動の関係についてサイクリックボルタンメトリー(CV)法を用いて検討を行った。アゾベンゼン骨格に対して置換基を持たない分子をフィルム中に固定化した電極を用いた場合、電極の電気化学応答は得られなかったが、4,4'の位置に長鎖を有する誘導体を固定化した電極では電気化学活性が発現し分子の構造依存性が見られた。以上より、混合フィルム中での電気化学活性の発現のためにはアゾベンゼン骨格が長鎖アルキル基を有している必要があることが明らかとなった。さらにアゾベンゼン分子の光異性化による電極応答のスイッチングを期待したが、作製した電極系では明確な照射光依存性は観測されずフィルム中のアゾベンゼン分子は常に電気化学活性を示した。この結果は二分子膜フィルムが有機溶媒中と同じような反応場を提供するマトリックスとして作用している事を示唆しており、非常に興味深い知見である。さらに今後の詳細な実験で明らかにしたい。 来年度はフィルム中の分子の異性化や電気化学反応に与える二分子膜脂質の影響についてさらに詳細な知見を得、さらに生体内電子移動反応や植物の光合成に関するモデル反応場としての応用の可能性を探る事を計画している。
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