1999 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の抗菌タンパク遺伝子群の分子進化学的研究-ショウジョウバエセクロピン遺伝子群を中心として-
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11740416
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
伊達 敦子 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化研究科, 助手 (50303003)
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Keywords | 昆虫免疫系 / 抗菌タンパク / セクロピン / アンドロピン / 正の自然選択 |
Research Abstract |
昆虫の代表的な免疫分子である抗菌タンパク遺伝子の進化過程の検証から、昆虫免疫系の遺伝的仕組みと進化に伴う多様化を考察することを目的とし、ショウジョウバエセクロピン遺伝子群を題材として研究を行っている。 本年度の研究成果は以下の通りである。 1.多種のショウジョウバエ系統からのセクロビン遺伝子群クローニングと遺伝学的解析キイロショウジョウバエ近縁種である Drosophilia yakuba,D.takahashiiについてゲノムライプラリーを作成し、セクロビン遺伝子のPCN産物をプロープに用いて遺伝子群全長のクローニングを行った。各々の種でセクロピン遺伝子を含む配列をスクリーニングすることが出来、現在はその遺伝子構造を決定すべく、解析中である。これらの結果を元に、セクロピン遺伝子群の進化過程を解明する。 2.アンドロビン遺伝子の発現及びタンパクの活性比較 セクロビン遺伝子群内にある雄特異的な発現を示すアンドロビン遺伝子は、構造遺伝子の配列がショウジョウバエ種間で大きく異なり、その進化には正の自然選択の作用が示唆されている。これらの配列の変化が、遺伝子発現及びタンパクの活性に何らかの影響を及ぼしているかを知るために、キイロショウジョウバエ近縁4種のアンドロビン5'上流調節領域の塩基配列の決定比較と合成ペプチドを用いた抗菌活性の比較を行った。5'上流調節領域には、調査したキイロショウジョウバエ近縁4種間において全て、総射精管特異的発現を担うシスエレメントが確認された。一方抗菌活性の比較では、種特異的な活性を示す菌は見つからなかったものの、近縁種アンドロビンベプチドにおいてB.subtilisに対する抗菌活性の有意な上昇が見られた。即ち、アンドロピンは、雄射精管に発現する抗菌タンパクである性質を保持しつつ、種によって作用する菌や特異性に差がある可能性が指摘された。今後さらに調査する菌種を増やしてこれらの傾向を明確にし、突然変異体の作成からアンドロビンの生体内機能を解明したい。
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