1999 Fiscal Year Annual Research Report
分子マーカーを用いた北東アジア産トガリネズミ群集の成立過程の推定
Project/Area Number |
11740421
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大舘 智志 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (60292041)
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Keywords | トガリネスミ / 北東アジア / ミトコンドリアDNA / マイクロサテライトDNA / 生物地理 / 群集 |
Research Abstract |
1.ミトコンドリアのチトクロムb遺伝子の塩基配列に基づく北東アジア産トガリネズミ6種の種内系統については分析をほぼ完了した。それによるとオオアシトガリは地域による遺伝的な偏りは観察されず、これに対しヒメトガリ、バイカル/シントウトガリ・グループ、チビ/アズミトガリ・グループでは地域による系統の違いが多少の程度の差はあれ観察された。従ってオオアシトガリは地域個体群が分離後、遺伝的分化が進んでいないことを示し、新しい起源を持つと考えられた。一方、チビ/アズミトガリ・グループのチビトガリではユーラシア大陸の東と西で系統が異なることがわかったが、バイカル/シントウトガリ・グループのバイカルトガリでは大陸内では遺伝的変異がほとんどないことがわかった。これにより、大陸における起源は、バイカルトガリよりもチビトガリが古い歴史を持っていると考えられた。さらにバイカル/シントウトガリにおいては予想とは異なり、北海道産の個体群はサハリンや大陸産のものから離れた系統的位置が確認できた。現在これらの結果は国際誌に投稿中である。 2.マイクロサテライト遺伝子の多型については、オオアシトガリで5つ、バイカル/シントウトガリ・グループで6つの遺伝子座を決定し、現在、本格的分析を準備中である。 3.韓国での採集調査により、済州島より未記載のトガリネズミを発見し、現在記載作業を進めている。また半島部より韓国からは未記録の2種を採集した。これらの発見により北東アジアのトガリネズミ群集成立の推定についての大幅な変更を迫られている。
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