1999 Fiscal Year Annual Research Report
植食性昆虫の寄主範囲の進化に関する量的遺伝学的研究
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11740427
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上野 秀樹 新潟大学, 教育人間科学部, 助教授 (10282972)
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Keywords | 遺伝分散 / 遺伝共分散 / 選好性 / オオニジュウヤホシテントウ群 / 寄主範囲 / 植食性 / 種分化 / 生殖隔離 |
Research Abstract |
1. オオニジュウヤホシテントウ群は、種々のレベルでの生殖的隔離を示す近縁種群であり、種分化の進化的プロセスを解明するための好適な対象である。このグループの種、或いは地域個体群は寄主植物利用について高い変異性を示すことから、寄主植物との相互作用がこのグループの種分化のプロセスに関与している可能性が高い。研究者は種分化プロセスに影響を与える遺伝的構造の効果を調べるために、現在までに幾つかのオオニジュウヤホシテントウ群の地域個体群を対象として寄主植物の利用能力と寄主への選好性について量的遺伝学的手法に基く解析を行なってきた。本研究はその一環として、オオニジュウヤホシテントウ群の1種であるヤマトアザミテントウに関して遺伝解析を行なった。 ヤマトアザミテントウは、ジャガイモ(ナス科)、アザミ(キク科)を利用する。本研究では滋賀固体群をヤマトアザミテントウの実験に使用した。この個体群はアザミを主に利用するが、一部の個体は近傍のジャガイモ畑に移入する。個体毎の摂食量の測定から、この過程には食草に対する選好性が関与していることが示された。遺伝解析はシブ解析で行なった。兄弟を分割し、それぞれ異なる植物上で成長させることによって、食草の利用能力に関する遺伝分散量の評価、利用能力間の遺伝相関の推定を行なった。同時に食草に対する選好性についても遺伝解析を行い、食草の利用能カとの間の遺伝相関を推定した。詳細な結果については、現在解析中であるが、選好性の変異の一部は遺伝的であることを示唆する結果が得られた。この結果は、寄主植物への選好性という行動形質が寄主範囲の決定に関与している可能性があることを示すものと考えられる。 2. オオニジュウヤホシテントウ群の1種であるルイヨウマダラテントウとエピラクナ属に属するトホシテントウについて予備的な調査を行なった。植物への選好性、分布域と地域個体群毎の変異性などについて調査し、平成12年度に予定した遺伝解析の為の予備調査とした。また、今後の遺伝解析の為に食草の一部の移植を行った。
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