1999 Fiscal Year Annual Research Report
林床に生育する樹木稚樹の光合成・呼吸機能の季節変化とその生理生態的意義
Project/Area Number |
11740429
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
横田 岳人 奈良女子大学, 理学部, 助手 (60304151)
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Keywords | イヌガシ / 春日山 / 開花結実 / 冬芽の展開 / 土用芽の展開 / 物資収支 |
Research Abstract |
常緑広葉樹林と落葉広葉樹林とで共に下層を形成している樹木稚樹が、それらの樹林内で様々に異なる環境条件にどのように対応しているかを、物資生産の面から明らかにする目的で調査を行った。当初、光合成交換機能について測定を行なう予定であったが、機材の関係上、シュート成長を中心とした解析を今年度は行った。調査地は奈良市春日山(御蓋山)の北東斜面である。ツブラジイ・モミを林冠木とする常緑樹林内とウリハダカエデを林冠木とする落葉樹林内に、それぞれ800〜1000m^2の調査プロットを設け、プロット内の植生調査を行った。林床にはイヌガシ、シキミが共通して多く見られた。冬季の林冠開空度は常緑樹林、落葉樹林でそれぞれ20%、35%あり、林床付近の明るさには大きな違いがある。これらのプロットからイヌガシ各10個体を選び、各個体3本程度の枝をマークし、各シュートの成長や展葉と落葉、開花結実、冬芽形成を測定した。3月時点で形成されていた冬芽のうち5月までに開葉した芽の割合は、常緑樹林で2/3程度、落葉樹林で1/4程度で、冬季明るい環境に置かれる落葉樹林の方が冬芽の展開に失敗する割合が多かった。開花個体は常緑樹林で4個体で、これらの個体は秋に土用芽を展開することはなかった。一方、落葉樹林では一個体が開花した。この個体は春に冬芽の展開に全て失敗したが、秋に土用芽か展開した。結実率はどちらの林分も0%であった。これらの結果を物資収支の観点から見ると、開花がシュートの展開にマイナスの影響を持つことが示唆された。
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