1999 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム情報を活用したラン藻のクロロフィル供給制御機構の解析
Project/Area Number |
11740445
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 祐一 大阪大学, 蛋白質研究所, 助手 (80222264)
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Keywords | クロロフィル合成 / ラン藻 / プロトクロロフィリド還元酵素 / 光合成細菌 / 光傷害 |
Research Abstract |
ラン藻は、クロロフィル(Chl)生合成系の一過程であるプロトクロロフィリド(Pchlide)の還元に、光依存性酵素と光非依存酵素の2種類の異なる酵素系を有する。最近、植物において光依存性Pchlide還元酵素(LPOR)が、本来の触媒機能以外に光傷害を防止する機能を有することが指摘されている。そこで、この可能性を検討するため、先に筆者が単離したラン藻のLPOR欠損株YFP12の形質の検討を試みた。光強度約150μE m^<-2>s^<-1>の光条件下で空気(二酸化炭素5%)を通気した光独立栄養的な生育では、野生株が世代時間約7時間で生育するのに対し、変異株は白色化を起こし生育することができなかった。ところが、同じ光条件下で嫌気的条件すなわち窒素95%二酸化炭素5%のガスを通気して培養すると、変異株は野生株より世代時間が2倍程度長くなるが、生育することができた。この形質は、ラン藻においてもLPORが光酸素傷害を回避する上で、重要な機能を有することを示唆するとともに、もう一つのPchlide還元系である光非依存性還元酵素が、酸素に対して感受性を有するという仮説を支持している。 光非依存性Pchlide還元酵素(DPOR)は、その推定構造遺伝子の相同性から、ニトロゲナーゼと類似した酵素であることが指摘されてきたが、長くその酵素化学的実体が不明のままであった。筆者は、光合成細菌Rhodobacter capsulatusを用いて本酵素のアッセイ系を確立した。3つの推定サブユニットのうちの2つ(BchL、BchN)をS-tag融合蛋白質として、R.capsulatusで発現させ、アフィニティを利用して精製した。その結果、3つ目のサブユニットBchBが、BchNとともに精製されたことから、これら2つのサブユニットが複合体を形成していることが示された。また、Pchlide還元活性は、これら3つのサブユニット存在下、ATPとジチオナイトに依存して検出された。これらの結果は、DPORがニトロゲナーゼと共通した性質を有することを初めて実験的に示すものである。
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