2000 Fiscal Year Annual Research Report
高等植物のオルガネラ遺伝を制御する雄原細胞特異的なDNA分解・合成に関する研究
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11740456
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
永田 典子 理化学研究所, 植物機能研究室, 基礎科学特別研究員 (40311352)
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Keywords | アサガオ / オルガネラDNA / 花粉 / 細胞質遺伝 / 色素体 / ミトコンドリア / 雄原細胞 |
Research Abstract |
高等植物には、オルガネラDNAが両性遺伝する種も存在する。研究代表者は両性遺伝型の植物種であるアサガオを用いて、花粉の形成・成熟過程を通じて詳細にオルガネラDNAの挙動を追跡した。その際、1細胞内でミトコンドリアDNAと色素体DNAを識別するという新しい形態学的手法を開発した。その結果、雄原細胞形成直後に、雄原細胞内の色素体DNAが劇的に増加し、ミトコンドリアDNAが減少・消失することを見いだした。このことから、研究代表者は「高等植物においてオルガネラDNAが母性遺伝するか両性遺伝するかは、花粉雄原細胞において父方オルガネラDNAが分解されるか合成されるかに依って決定される」という仮説を導きだした。さらにこのミトコンドリア識別法を用いて、アサガオの花粉形成過程におけるミトコンドリアの挙動を網羅的に解析した。その結果、雄原細胞形成前後にミトコンドリアが核膜を隙間なく覆うという現象を発見した(Nagata et al.in press;Protoplasma)。この際、核膜孔の位置に寄り添うようにミトコンドリアが整列することも電子顕微鏡学的に確認された。この現象は、ミトコンドリアと核との間に、なんらかの情報をやりとりするしくみが存在していることを示すものである。ミトコンドリアと核のインターラクションの研究において、今後有効なモデル系になると思われる。
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