1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11740459
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 学 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (60301785)
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Keywords | 受精 / 卵 / 細胞内カルシウム / 低分子量Gタンパク質 / アクチン / 細胞骨格 / PI3キナーゼ |
Research Abstract |
ユウレイボヤ卵は受精直後に一過的な細胞内カルシウムの増大が起き、それを引き金に細胞質の分層を伴うダイナミックな卵の変形が起こり、これがその後の発生の極性を決定づけている。この現象にはアクチン細胞骨格系の関与が解っているが、細胞内カルシウムの増大からの作用機作がまだ不明であった。本研究はこの作用機作の解明にあたっている。 平成11年度は、細胞骨格アクチンの重合・脱重合を制御し、卵割に関与していることが知られている低分子量Gタンパク質rhoに着目し、その卵形変化への関与と細胞内カルシウム増大との因果関係について検討した。その結果、ユウレイボヤ卵にもrho様のタンパク質が存在すること、rho特異的阻害剤であるC3酵素により受精直後の卵形変化が阻害されることが明らかとなった。さらに、このC3酵素による卵形変化の阻害は、細胞内カルシウムの変動には影響を与えないこと、イノシトール3リン酸やカルシウムイオノフォアで人為的に一過的な卵内カルシウム濃度の上昇を引き起こすことで誘導される卵形変化もまたC3酵素によって阻害された。以上の結果より、卵形変化は受精による刺激によるイノシトール3リン酸誘導型の細胞内カルシウム濃度上昇がrhoを活性化し、アクチン繊維の挙動を制御していると考えられる。 また、イノシトールリン脂質代謝系の関与も検討した。PI3キナーゼ阻害剤である、Wortmannin,LY294002は卵変形及び細胞質の分層を押さえ、また、卵表層のアクチン繊維の分布を攪乱した。以上のことからホヤ卵受精時の変形、細胞質の分層にPI3キナーゼを介するイノシトールリン脂質代謝系の関与が示唆される。
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[Publications] M.Morisawa,S.Oda,M.Yoshida, and H.Tkai: "Transmembrane signaling transduction for the regulation of sperm motility in fishes and ascidans"in "Male Gamete : from basic knowledge to clinical applications.", Ed. by C.Gagnon,Cache Riber Press. 149-160 (1999)