1999 Fiscal Year Annual Research Report
分子マーカーを用いたイチジク属とイチジクコバチ類の共種分化過程の解析
Project/Area Number |
11740464
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横山 潤 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (80272011)
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Keywords | イチジク属 / イチジクコバチ類 / 共種分化 / 分子マーカー / ミトコンドリアDNA / 遺伝的分化 |
Research Abstract |
本年度は、イチジク属植物-イチジクコバチ類送粉共生系における、共種分化過程を解析するために適切な分子マーカーの探索を行った。九州南部、奄美大島、沖縄本島、石垣島で採集したアコウとイヌビワおよびそれらに特有のイチジクコバチ類を用いて、ミニサテライト・マーカーの探索を行った。上記2種について、他の植物種で用いられているプライマーで実験を試みたが、再現性に乏しく、新たなマーカーの探索が必要となった。RAPDプライマーを用いて得られた増幅産物の中に、特定の繰り返し配列が存在するか否かをサザン・ハイブリダイゼーションで調べた結果、繰り返し配列を含む領域を得ることができた。これらの塩基配列を決定し、特定に繰り返し配列を増幅するプライマーが構築した。現在これらを用いて、上記4産地の集団内の遺伝的多型および集団間の遺伝的分化の程度を調べている。イチジクコバチ類に関しても新たなミニサテライト・マーカーの開発が必要となり、現在その探索を行っている。イチジクコバチ類についてはミトコンドリアDNAのcoxI-coxII遺伝子間領域の塩基配列決定も行った。その結果、イヌビワコバチには各産地間に固有のハプロタイプの存在が確認され、地域間の遺伝的交流が制限されていることがわかった。一方、アコウコバチに関しては十分なサンプルの入手ができなかったが、これまでのところ地域間でのハプロタイプ分化は不明瞭で、少なくともミトコンドリアDNAのデータからは明らかな遺伝的分化は認められなかった。予察的ではあるが、この結果は雌雄同株のイチジク属植物では非常に広い範囲で遺伝的交流を行っているとのこれまでの報告と一致する。今後は現在探索を行っているミニサテライト・マーカーを用いて、より精度の高い集団間の遺伝的解析を行っていく予定である。
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