1999 Fiscal Year Annual Research Report
HLA遺伝子多型の数理解析に基づく渡来系弥生人の移住時期と規模の推定
Project/Area Number |
11740477
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大橋 順 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (80301141)
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Keywords | HLA遺伝子 / HLAハプロタイプ / 現代日本人の形成 / 朝鮮半島からの移住 / アイヌ人 / 沖縄人 / 韓国人 / 本土日本人 |
Research Abstract |
(1)北海道に住むアイヌの人々と沖縄本島に住む人々のHLA遺伝子解析を完了し、アイヌの人々が有するHLAハプロタイプ(HLA-A-B-DRB1)および沖縄の人々が有するHLAハプロタイプ(HLA-A-B-C-DRB1)を決定した。本土日本人も含めた三者の遺伝子頻度の比較から、本土日本人と沖縄人との方が、本土日本人とアイヌ人よりも、遺伝的に近縁である事が見出された。さらに、HLAハプロタイプの比較により、アメリカ先住民において観察されているハプロタイプをアイヌ人も共有していることが明らかになった。以上の結果は、アイヌ人は後期旧石器時代にアジア大陸に居住していた祖先を持ち、沖縄人よりも遺伝的に孤立してきた集団である可能性が高いことを示唆している。 (2)アイヌ人が後期旧石器時代頃にはアジア大陸に住んでいた祖先を持つと考えられることから、古くからアジアに居住していた集団を祖先に持つパプアニューギニア・ギデラ族(3〜5万年前にパプアニューギニアに到達したと推定されている)のHLA遺伝子解析を行なった。ギデラ族とアイヌ人やアメリカ先住民との遺伝的な近縁性は見出されず、同じモンゴロイド集団ではあっても、複数のグループが旧石器時代にはアジア大陸に居住していたと思われる。 (3)HLAハプロタイプの形成およびその維持には、HLA遺伝子座で働く超優性淘汰が強く影響を及ぼす。そこで、超優性淘汰が働く遺伝子座の近傍に位置する中立遺伝子座(領域)が受ける影響を、分子進化学観点から数理解析を行なった。その結果、超優性遺伝子座との組換え率が0であり、非常に強く連鎖した中立遺伝子座では、多型性や対立遺伝子数は増加するが、分子進化速度は全く影響を受けないことが明らかとなった。本研究により用いられた理論、およびシミュレーションプログラムの開発により、日本人のHLAハプロタイプが形成され維持される過程を研究する上での基礎理論が完成した。 (4)未発表ではあるが、本土日本人、韓国人、沖縄人、アイヌ人のHLA遺伝子およびハプロタイプ頻度から、本土日本人および韓国人における主要なHLAハプロタイプは2000〜3000年前に誕生もしくは他の集団から伝わった可能性が高いことが明らかとなった。朝鮮半島からの移住は2300年前頃から開始されたと推定されており、我々の得た結果とよく符合している。この問題について、現在更に詳細な検討を行なっている。
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[Publications] Ohashi J.Tokunaga K: "Sojourn times and substitution rate at overdominant and linked neutral loci"Genetics. (in press). (2000)
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[Publications] Ohashi J et al.: "Analysis of HLA DRB1 polymorphism in Gidra living in South New Guinea"Human Biology. (in press). (2000)
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[Publications] Bannai M et al.: "Analysis of HLA genes and haplotypes in Ainu (from Hokkaido, northern Japan) supports the premise that they decent from Upper paleolithic populations of East Asia"Tissue Antigens. (in press). (2000)
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[Publications] Lin M et al.: "Heterogeneity of Taiwan's indigenous population : possible relation to prehistoric Mongoloid dispersals"Tissue Antigens. (in press). (2000)
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[Publications] 大橋順,徳永勝士: "遺伝子からみた現生人類の起源と進化-ヒトゲノムの多様性(2)-"生物の科学 遺伝. (印刷中). (2000)
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[Publications] 大橋順,徳永勝士: "1999HLAの多型:命名法・起源・意義"Diabetes Frontier. 10・3. 393-399 (1999)