1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11750031
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
藤井 功 東海大学, 開発工学部, 講師 (60238524)
|
Keywords | 超撥水 / フラクタル構造 / 結晶化 / タンパク質 / リゾチーム / シッティングドロップ / X線結晶解析 / 核形成 |
Research Abstract |
本研究目的は、超撥水効果を示すアルキルケテンダイマ等を用いて、その撥水効果がどのように結晶成長に影響するかを明らかにし、その現象を結晶成長に利用する方法を確立することにある。超撥水効果を有するフラクタル面が、結晶化に有効に作用するかどうかを検討するために、つぎの点を明らかにした。1.リゾチーム蛋白質の結晶化による結晶性と超撥水性との相関性。2.表面張力と結晶核形成との相関性。3.フラクタル面が、液滴に与える化学的影響である。 アルキルケテンダイマ(AKD)を用いたフラクタル構造をなす超撥水面での結晶化実験を行い、結晶化条件を様々に変えたときに得られる結晶のデータを収集した。まず撥水性能とAKDの純度は密接な関係があるので、超撥水面を形成するAKDの精密合成と精製を行った。得られたAKDを用いてフラクタル構造の超撥水面を作成し、標準試料として用いられる卵白リゾチームによる結晶化実験を行った。以下の条件について、シッティングドロップ法による結晶化を試みた。1.蒸気拡散する速度は、表面の形状(表面積)に依存することが考えられるが、液滴のサイズ(形状)と得られる結晶データとの関係から、フラクタル構造を持った超撥水面では影響を受けにくいといえる。2.界面に働く力によっても、蒸気拡散の速度や核形成に影響を与えると考えられたが、超撥水面では影響を受けにくいことが示された。3.結晶化にさいして、超撥水面との接触による母液の化学的変化は捉えられなかった。 従来のシリコンコート法に比較して、フラクタル面を用いた場合、生成する結晶数は1/10と少なく、個々の結晶の大きさでは逆に3〜4倍に大きくなることが明らかになった。本結果は、フラクタル構造を持つ超撥水面が、重力場においても大きな結晶を得る上でひとつの重要な方法になることを示唆するものである。
|