Research Abstract |
光増幅機能を有する新たな機能材料として期待されているテルライトガラスについて,本年度は,ヤング率,ポアソン比,硬さおよび破壊じん性値などの機械的性質の測定法を確立し,その評価を行った.とくに破壊じん性値の測定法に関して,本供試材はきわめてぜい性的であるため,IF(Indentation Fracture)法による測定が一般的と考えられる.しかし,硬さ試験の際に圧痕を観察した結果,圧子の押し込みによって発生したき裂の形態が不安定で,IF法により正確な値を得ることが困難であると推定された.また,セラミックスの破壊じん性に関するこれまでの報告より,IF法は負荷荷重など試験条件の影響を受けやすく,材料固有の破壊じん性値を測定することが困難である.そこで,本研究では,破壊力学的に妥当性が高いと考えられる.SEPB(Single Edge Precracked Beam)法による測定を試みた.試験片は,5×10×45mmの曲げ試験片形状とした.まず,マイクロビッカースにより微小なき製を試験片表面に発生させた.様々な負荷荷重を試み,安定なき裂発生状態が得られる荷重条件を決定した.その後,BI(Bridge Indentation)法により,圧痕周辺に局所的な引張り応力を発生させ,貫通き裂を導入した.ここでも様々な溝幅を試み,試験片を破断させずに長さ1.0mm以下の貫通き裂を導入する条件を求めた.さらに,スクラッチ試験機を改造し,低荷重での精度を確保しつつ4点曲げ試験を行うことを可能とした.SEPB法による測定の結果,IF法により得られた破壊じん性値;0.22MPam^<1/2>より低い,0.17MPam^<1/2>の値が得られた.なお,本供試材は環境に敏感であるため,温度20℃,湿度55%の恒温恒温室内で破壊じん性試験を行った.以上のように,本研究で取りあげる機能性材料について,各種機械的性質を評価できる手法を確立したことにより,今後,機械的特性と機能性との関連を評価することが可能となった.
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