2000 Fiscal Year Annual Research Report
粘菌行動の反応拡散移流モデルに学ぶシステムの自己組織化
Project/Area Number |
11750222
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中垣 俊之 理化学研究所, 局所時空間機能研究チーム, フロンティア研究員 (70300887)
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Keywords | physarum / oscillation / maze / morph-senesis / reaction-diffusion |
Research Abstract |
我々は、アメーバ様細胞である粘菌変形体が、迷路の経路探索問題の最短解を見出すことができることを発見した。迷路いっぱいに広がる粘菌に、餌を二ヶ所に与えると、行き止まりの経路に伸びている粘菌が衰退し、餌場所を繋ぐ経路にのみ管を残した。この管の配置は、出口を結ぶ全ての経路を示している。これは、見方を変えれば迷路の解をすべてあげつらっていることになる。さらに、時間が経つと、餌場所を繋ぐ管のうち長いものから衰退し、最後には最も短い管だけが残った。この経路は迷路の最短経路である。衰退した部分は、餌場所へ運ばれ餌を包み込んだ。これにより、粘菌は迷路のような複雑な状況でも、二つの餌場所から効率よく養分を吸収できるだろう。粘菌は、経路の長さという評価基準で、迷路の全ての解を序列付けることができた。粘菌の計算能力の高さが伺われる。このような粘菌の迷路探索機構は、反応拡散方程式のパターン形成としてモデル化できることを示した。粘菌の変形運動は、局所的に発生する自励的化学リズムの織り成す時空パターンに基づくことが分った。 粘菌を用いた実験を行うことにより解を求めるという粘菌コンピューターの可能性が生まれた。計算量の爆発を伴う組合せ最適化問題への適用が期待される。粘菌は、原形質と呼ばれる物質の塊であるから、粘菌の計算能力が明らかになれば、物質による情報機能の再構成などの機能性材料の設計原理に新たな方向となる。また、生物情報処理機構の研究に全く新しい切り口を与えた。単細胞生物のこのような高い情報機能は、脳にみる高次情報機能の一つの進化的起源として極めて興味深い。
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[Publications] T.NAKAGAKI,H.YAMADA,A.TOTH: "Maze-solving by an amoeboid organism"NATURE. 407. 470-470 (2000)
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[Publications] T.NAKAGAKI,H.YAMADA,T.ueda: "Interaction between cell shape and contraction pattern"Biophysical Chemistry. 84. 195-204 (2000)
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[Publications] T.NAKAGAKI,H.YAMADA: "[Quantum Information II](Edited by T.Hida,K.Saito)-Rhythmic Contraction and its Fluctuation"World Scientific Publisher Co.(singapore). 227(107〜124) (2000)