1999 Fiscal Year Annual Research Report
電子線照射による大電力高周波管高周波窓の表面放電しきい値評価に関する研究
Project/Area Number |
11750277
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Research Institution | The High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
道園 真一郎 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助手 (80249903)
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Keywords | 高周波管 / 電子線 / 高周波窓 / 帯電 / 表面放電 |
Research Abstract |
本年度は,セラミックに照射するための電子銃の試作を行った.電子銃はブラウン管に使用されている部品を用い,また,印加電圧6kV,2mAまでは出力可能であった.それ以上の印加についても電源容量が十分である電源を用いれば可能と思われる.並行して,高周波通過後のセラミック表面における表面の帯電についても測定を行った.その結果,1)2nm程度のTiNをコーティングした場合に帯電の分布が小さくなること.ここで,TiNはセラミック表面の二次電子放出係数を下げてマルチパクタ(二次電子が高周波電界により雪崩状に増殖する現象)を起こりにくくするためのものである.2)セラミックを通過する電力にほぼ比例して帯電は大きくなり,220MW程度の通過電力で1-2kV程度の帯電が見られることがわかった.帯電は,入射電子のエネルギーの10%以下であったので,帯電が入射電子に及ぼす影響は小さいことが確認できた.また,一般に高周波通過電力が低い(数MW)場合のほうが,表面でのマルチパクタが見られるが,今回の実験はマルチパクタの有無に寄らず通過電力で表面の帯電量が決まっていることを示唆している.このことは,放出された電子が金属に到達することなくセラミックにとどまると考えることで説明ができる.その場合,帯電量はセラミック端面からの電子放出量で決まるが,電界が高い場合ほど電子放出量が高くなるので,通過電力が高いほど帯電量が高くなるということになる.この仮説によれば,端面からの電子放出量を押さえれば表面帯電を小さくでき,それにより表面帯電のしきい値を向上できる可能性がある.たとえば,端面部分からの電子放出を抑えるために,端面により厚いTiNコーティングを施すことなどが考えられ,実際の高周波窓のコーティングを行う上で貴重な実験結果が得られた.
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