1999 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト視覚系の明るさ知覚情報処理機構に基づく画像強調手法に関する研究
Project/Area Number |
11750366
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
塚田 章 富山大学, 工学部, 助手 (40236849)
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Keywords | 順応 / 錐体 / モデル / 画像強調 |
Research Abstract |
視覚系は従来の機械に比べて優れた情報処理機構を有している.例えば,写真やビデオなどの撮像装置で明と暗が混在するシーンを撮影すると,コントラストと有効露光域とのトレードオフにより明暗のどちらかを犠牲にすることになる.一方,ヒトは明暗の輝度差が3対数単位程度であれば明暗両方の情報を同時に認識することができる.これは,ヒト視覚系の情報処理機構が従来の撮像装置にはない特有の仕組みを有しているからと考えられる.本研究では,代表者がこれまでに提案している明るさ知覚に関する現象を記述する視覚情報処理モデルを基に,ヒト視覚系の情報処理機構を模擬した画像強調手法の開発を目的とした. 上述の例にはヒト視覚系の順応という機能が関与していると考えられる.視覚系における順応は基本的にはシーンの輝度レベル付近に動作曲線を遷移するという機能であり,この意味では撮像装置における自動露出機能と同等であるが,視覚系が撮像装置と異なる点はシーンの部分的な状態に応じてそれぞれの順応レベルをもつことではないかと予想される.そこで,我々は網膜錐体細胞の外節に細胞外フィードフォワード機構を仮定し,順応のモデルを提案した.細胞外フィードフォワード機構は入射する光の強さに応して細胞外に物質が放出され,空間的な相互作用を経て再び錐体に取り込まれるものである.これにより,部分的に順応レベルが異なる状態を表現できるようになる.現在このモデルは1個の錐体のみを取り扱っており,空間的な現象をシミュレートするには至っていないが1個の錐体に関する従来の実験結果を記述することができる.
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