1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11750404
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田中 玲子 慶応大学, 理工学部・物理情報工学科, 助手 (50306875)
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Keywords | 対称システムの可制御性 / 群論的対称性を有するシステムの数理解析 |
Research Abstract |
本研究は、多数の要素からなるシステムにおいて、要素個数の量的変化がシステムの質的変化を引き起こし、ある個数以上の要素が集まると、それまで実現できなかった機能が創出される、ということの原理・解析法を探ることを目的としている。 しかし、未知の新たな機能を初めから扱うことは困難である。そこで、本研究ではまず、逆に、要素故障による正常な要素数の減少で、システムのもつ何らかの機能が失われる場合を扱った。特に、システム全体の可制御性の有無という性質に着目した。その結果、一般的な群論的対称性をもつシステムについて、質的変化の起きる量的変化を定量的に明らかにした。この結果は、雑誌論文として掲載され、また、国際学会での発表により、多くの研究者から関心を寄せられた。「対称性」という定性的な性質のみから、可制御性を保持するのに必要な制御入力数という定量的な値を導き出した点で興味深い結果である。 現在さらに、要素個数をパラメータとし、質的変化をシステムの性質の分岐点と見て、「群論的対称性に基づく分岐理論」の利用を検討中である。一般には、対称性をもつ非線形システムの分岐理論が確立されており、それに照らし合わせて、これまでの結果を非線形システムに拡張していく予定である。既に分岐理論を用いた解析の進められている土木、結晶学、パターン生成等の分野におけるアナロジーも検討中であり、本研究これまでの成果に基づき、これらの分野の国内外の研究者との討論を通じてその意義を明らかにしてきた。協同研究も含めて今後の研究の発展が期待されている。
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