Research Abstract |
本研究は,橋梁用主部材の接合法として,あまり注目されてこなかった高力ボルト引張継手を積極的に採用していくための基礎的資料の提供を目的としている.特に,構造物における景観上の配慮から,その適用の可能性が高い片締め引張接合を対象に,その力学的挙動の解明とその合理的な継手構造の検討に重点を置いている. 本年度は,この継手形式の力学的挙動を解明するために,微小片締め引張接合部分モデル供試体を15体製作し,単調引張載荷実験により実験的にその挙動を解明するとともに,次年度以降に行う解析の参照データとすべく,データを収集した.特に供試体の設定にあたっては,1)複数列配置による影響,2)縁端距離の影響,3)高変形能ボルトの効果,4)行間隔の影響,の以上4項目に注目し,これらをパラメータとして設定した.また,載荷実験では,継手部耐力だけでなく,継手部の離間,およびボルト軸力の変化にも注目した. そして,以下に示すような結論を得た. 1)継手部最大耐力は,ボルト列数の増加に伴い,上昇するが,3列以上では目立った効果は見られない.一方,行数については,フランジ板厚との関係にもよるが,基本的には行数に比例して耐力も増加する.ただし,フランジ板厚が極厚の場合は,ボルト軸の曲げ剛性とフランジ板の曲げ剛性との関係から列数に比例した耐力増加は期待できない. 2)高変形能高力ボルトを用いた場合,継手部耐力の増加に与える影響よりも,継手部の伸び変形能の改善に与える影響の方が大きい.したがって,フランジ板を極厚にして継手部耐力を増加させ,高変形能ボルトを用いて,伸び変形能を改善することが片締め引張接合としては望ましいと考えられる. 3)ボルト配置については,フランジ板を厚くすることで,高力ボルトの力学的挙動が継手部の力学的挙動において支配的となるため継手部耐力に与える影響は小さくなるが,離間現象に与える影響は小さくないので,この点に注目して配置を検討する必要がある. 4)次年度は,これらの成果をもとに,有限要素解析により定量的な評価を行い,合理的な片締め引張接合構造について検討する.
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