2000 Fiscal Year Annual Research Report
風の影響を考慮した3次元広域海浜流モデルの開発とその適用性に関する研究
Project/Area Number |
11750455
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 茂 京都大学, 防災研究所, 助手 (40303911)
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Keywords | 広域海浜流 / 吹送流 / 循環セル / Bailardの漂砂量モデル / 沿岸漂砂 |
Research Abstract |
沿岸域では,風による流れ(吹送流)が広い範囲にわたって形成され,風と波によって形成される海浜流場は砕波帯内からその沖合いにまで沿岸域全体に広がっていると考えられる.また,これまでの波浪のみを考慮した海浜流場やそれによる砂の移動限界水深に基づく漂砂問題へのアプローチでは海浜流の影響が過小評価されていると考えられる.したがって,広域海浜流の影響範囲とそれによる砂の移動範囲を知る必要がある. そこで,本研究では上越・大潟海岸における広域多点観測で得られた波浪と流れのデータを用いて,沿岸域での波浪および広域海浜流の時間・空間分布特性を検討した.それにより,以下のことが明らかとなった. ・砕波帯内では風と高波浪(砕波)によって強い沖向きの流れが発生し,沖向き漂砂(海岸侵食)の原因となっていると考えられる. ・沿岸方向の流れは,主に風によって沿岸域の広い範囲で発生し,砕波帯の沖側においても沿岸漂砂を発生させるのに十分な流速を持つ. ・冬季には北西方向からの季節風とそれによる高波浪によって,砕波帯内では沖向きの流れ,砕波帯の外側では東向きの流れが発生している.一方,うねりは北から来襲し,弱い岸向きの漂砂と海岸付近で西向きの流れが発生している.したがって,上越・大潟海岸では1年を通して,冬季季節風による沖向き・東向きの流れとうねりによる岸向き・西向きの流れによって,循環システム(循環セル)を形成していると考えられる. また,3次元広域海浜流数値モデルと観測結果を基に,風による広域海浜流の沿岸流速の岸沖方向分布を推定し,その推定式を提案した.この結果を用いて,平均流と波による移動量を考慮した漂砂モデル(Bailard,1981)により広域海浜流による沿岸漂砂量の算定を行った.その結果,冬季季節風・高波浪条件(ストーム)下では,水深20m付近まで活発な漂砂が発生していると推測された.また,異常ストーム時には水深20m以深でも沿岸漂砂が発生すると推測された.これにより,沿岸域での漂砂現象を扱う場合には,砕波帯沖側の水深20〜30mの領域も考慮した沿岸域全体での現象として捉える必要があることが明らかとなった.
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[Publications] 加藤茂,山下隆男: "3次元海浜流計算における乱流サブモデルのキャリブレーションに関する研究-ADCPによる海浜流の現地観測データを用いた検討-"海岸工学論文集. 第47巻. 91-95 (2000)
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[Publications] Kato,S and T.Yamashita: "Three-dimensional simulation model for coastal currents and beach changes"Proceedings of Korea-China Conference on Port and Coastal Engineering. 87-97 (2000)
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[Publications] Kato,S and T.Yamashita: "Three-dimensional model for wind, wave-induced coastal currents and its verification by ADCP observations in the nearshore zone"Proceedings of 27th International. Conference on Coastal Engineering, ASCE. (In press). (2000)