2000 Fiscal Year Annual Research Report
エクセルギー概念による自然冷房効果を考慮した建築・都市の外皮計画に関する研究
Project/Area Number |
11750529
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
西川 竜二 東京理科大学, 理工学部, 助手 (00307703)
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Keywords | 環境共生住宅 / 緑化屋根 / 透水性舗装 / 建築外部気候 |
Research Abstract |
本研究は、特に温暖地域の密集市街地における建築、およびその隣棟空間の計画・設計において、夏季の自然冷房効果が得られるようなデザインや手法の検証と提案を目的としており、その指針として熱力学のエクセルギー概念を念頭に置いている。 世田谷区の深沢環境共生住宅の室内空間、隣棟間、及び敷地周辺の実測調査と解析を行ない、深沢環境共生住宅の外皮に取り入れられた緑化手法や透水性舗装などが、室内や敷地内の温熱的快適性に与える影響と、敷地周辺の都市気候に与える影響について考察した。その結果、屋上緑化は室内空間に対しては日射熱の流入を遮断し天井面の焼けこみを防ぎ、在室者の頭部の火照りを解消することが確認された。同時に屋外気候に対しては、芝草の蒸発散の作用によって、昼は芝草上部の温度が外気温とほぼ等しく、大気中への顕熱放出がコンクリートや瓦などの人工物で出来た屋根面に比較して小さいことがわかった。また、夜間には、芝草上部の温度は外気温よりも1〜2℃低温で、微小な屋根面積であっても緑化を施せば大気を冷却する働きをして、都市部のヒートアイランド緩和に貢献する可能性があることが示された。 また、隣棟間断面の温度分布の計測から、透水性舗装は降雨の翌日には、蒸発冷却作用により終日通して路面を低温に保っていることが確認された。既往の研究報告では、保水性を持たない透水性舗装は蒸発効果が持続しないために、冷却効果があまり期待できないといわれてきたが、建物や樹木の計画的な配置により舗装に影を落とすことで、舗装面への日射吸収と蓄熱を十分に防ぐことが可能であり、建築的なデザイン次第で現状の透水性舗装の弱点を補い、長所を生かすことが出来ることを示した。 団地周辺地域の緑被率が20%であるのに対して、深沢環境共生住宅は、屋上緑化と透水性舗装の採用により緑被率50%、透水性面積率77%を達成しており、それによる熱環境改善効果は、昼間の気温が周辺街区よりも1〜3℃低温になっていることと、夜間の最低気温が1℃低くなっていることに現われていた。 自然環境において、日射エクセルギーの消費に伴って生成されるエントロピーは、雨水の蒸発によって上空大気まで運ばれ、そこから長波長放射にともなって宇宙空間に廃棄されていることからも、都市部において、緑化や透水性舗装を採用して雨水の循環を積極的に作り出す技術は、自然共生の技術と位置付けられる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] R.Nishikawa,M.Aratake,M.Shukuya,and K.Iwamura: "Micro-Climatic Characteristics of the Outdoor Space Formed by a Block of Flats Designed with Environmentally-Simbiotic-Housing Concept"International Conference on Passive and Low Energy Architecture, Proceedings. 423-424 (2000)
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[Publications] 西川竜二,武田仁,黒岩哲彦: "密集市街地における上方開放型戸建て住宅の通風・換気性能とその涼房効果に関する実測"日本建築学会大会学術講演梗概集D-II. 519-520 (2000)
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[Publications] 西川竜二,武田仁: "潜熱蓄熱材を利用した夏季の自然室温上昇抑制手法に関する研究"日本建築学会大会学術講演梗概集. (発表予定). (2001)