1999 Fiscal Year Annual Research Report
入居者の行動に配慮した痴呆性老人グループホームの物理的環境の評価
Project/Area Number |
11750532
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
隼田 尚彦 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40301014)
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Keywords | 痴呆 / 高齢者 / グループホーム / 住環境 / 環境認知 / 環境行動 / 物理的環境 / 社会的環境 |
Research Abstract |
研究代表者が基本設計から携わった札幌の痴呆性高齢者グループホームにおいて4台のビデオカメラに接続したタイムラプス・ビデオを用いて全入居者の行動観察を行った。現在,入居一年後の調査まで終了し,分析を進めているところである。 痴呆性高齢者の場合,引っ越しや居室の入れ替えなどの急激な環境移行への適応力が健常者に比べきわめて低い事が既往研究から明らかになっている。そこで,研究代表者は,本研究の主たる調査対象グループホームを以下のようなコンセプトに基づき設計した。(1)視覚効果による生活空間の明確な分節化。(2)入居者による共有空間の選択性,(3)生活空間と管理空間の間の視覚的バリアー(4)日常生活中の自然なリハビリによる身体能力維持など。(1)では,洗面台を「トイレが近くにある」と連想させるサインとし,さらに夜間はトイレ前や居室位置の失認のある入居者の部屋前のスポットライトを点灯することにより,居室群とトイレなどの共用空間群の明確な分節可を助け,トイレや居室の失認が減少するだろうとという仮説をたてた。入居直後の2日目から,ほとんどの入居者が,トイレや居室を間違えなかったが,それでも彼らが位置関係を完全には把握していないことが調査結果から見て取れた。(2)では,人間関係が形成されるにしたがい,状況に応じた共用空間の選択できるように,2階から1階への一方的な視覚的接続や,食堂と居間の双方向の視覚的接続などについて考慮して設計した。調査結果から,2ヶ月目までほとんどこの仕掛けが利用されることはなかったが,3ヶ月後には人間関係がある程度複雑化し始め,急速に利用されるようになってきた。さらに1年1カ月後には,2階からの一方的な視覚的つながりが,2階入居者全員の頻繁な行動としてみられるようになった。他のコンセプトに関しては,未だ上手く利用できていない現状である。
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