2000 Fiscal Year Annual Research Report
大黒柱と鳥居の発達過程からみた近世民家成立期における架構形成の多様性に関する研究
Project/Area Number |
11750547
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
堀江 亨 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (70256832)
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Keywords | 伝統的民家 / 架構法 / 梁算段 / 発達観 / 多様性 |
Research Abstract |
本研究は、これまでの民家史研究においてその複雑さゆえに系統的な分析が行われていなかった軸組と小屋組の中間領域に着眼し、地梁の配置を類型化することにより、日本各地の農家の架構法を系統づけることを目的としている。 分析対象は、中世後期より18世紀末までに建設された農家で、重文修理工事報告書・都道府県発行の民家緊急調査報告書・既往論文において、当該地域を代表する重要な遺構とされている167棟を予備的に選び、柱・梁の構成が類似し地域的に近接する類例を捨象して得られた86棟とした。 分析方法は、昨年度は最下層の地梁だけを対象に分析したが、重層化した梁組の特徴を有効に引きだすため今年度は全梁組を対象として、梁の高さにより上屋梁・敷桁・上付梁・下屋桁・地梁・差鴨居に階層化し、梁組の様相を図式化した。ここから架構の類型として、地梁の配置により「寡梁系」「並列系」「直交系」「囲繞系」の各系統を抽出し、併せて年代変化や地域分布を考察した。 その結果、近世初頭においては「地梁を用いない形式が先行し、地梁を架け渡した様々な形式が遅れて出現する」という、従来一般的に考えられていた発達観が成り立たず、固有の梁算段を伴った多様な架構法が日本の各地に並立していたことを明らかにした。また地域的な差異として、畿内を中心とする地域では、地梁を用いない簡素な架構を原形として柱間を抜く装置としての梁が発達していくのに対して、東日本では櫓状に組み上げた柱・梁架構が近世初頭の時点ですでに成立していた点が注目される。
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