1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11750555
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Research Institution | Kyoto Women's Junior College |
Principal Investigator |
井上 えり子 京都女子大学短期大学部, 講師 (70226736)
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Keywords | 中国 / 少数民族 / 羌 / ナシ族 / モソ人 / 住居 / 空間構成 / 住文化 |
Research Abstract |
本年度は四川省道孚地区において調査をおこなう予定であったが、直前になって大雨による道路閉鎖で現地入りが困難になったため、急遽、平成12年度に調査を予定していた四川省木里地区・雲南省永寧地区に調査地を変更した。調査対象民族はナシ族、調査期間は1999年8月13日〜9月4日である。 ナシ(納西)族の言語は東部方言と西部方言に大別できる。東部人としてモソ(摩梭)人を、西部人としてナシ(納喜)人を選び、両者を比較しながら住居空間構成について分析をおこなった。 主屋は平屋で、両者とも、校倉造り(木材断面;円)の主室のまわりに食糧庫や収納、家畜用台所を付加する構成となっている。主室もまた両者とも同じような構成で、正方形である、ほぼ半分が板床で残り半分が土間床となっている、室の四周のうちの二辺に造りつけの台がとりつけられる、イロリが2つあり、土間床側にあるイロリを「上のイロリ」、板床側にあるイロリを「下のイロリ」とよぶ等の特徴がある。 しかし日常生活との対応で空間を捉えてみると、両者は異なった空間領域を構成する。まず、モソ人は、日常生活を「下のイロリ」まわりでおこなう。アニミズムの神も「下のイロリ」の前にある。神に向かって左側が女の空間、右側が男の空間となる。それに対し、ナシ人は「上のイロリ」を中心に日常生活がおこなわれる。神は「上のイロリ」の斜め前に位置する。男女の空間領域もまた、イロリの対角線で分けられる。 つまり、空間のヒエラルキー(上座・下座)や領域区分は、モソ人の場合には正方形の主室を縦に二分する軸、ナシ人の場合には対角線によって分けられることがわかった。
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[Publications] 多田亮子,井上えり子 他: "ナシ族の住居空間構成に関する研究(掲載予定)"日本建築学会近畿支部研究報告集. 40. (2000)
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[Publications] 大戸宏美,井上えり子 他: "ナシ族の住民の構法に関する研究(掲載予定)"日本建築学会近畿支部研究報告集. 40. (2000)