Research Abstract |
本年度は,昨年度の,(1)「アーツ・アンド・アーキテクチャー(以下,AA)」誌の特徴の把握,(2)3.1940年代・50年代におけるロサンゼルス近代建築の空間構成に関する分析予備的分析をふまえ,特に,1940年代・50年代のロサンゼルス近代建築を先導した建築家ピエール・コーニッグの住宅作品の空間構成に関する調査・分析とその考察を行った. まず,彼の住宅作品の,空間構成材と架構の類型とその移行を考察し,以下の諸点を明らかにしている.空間構成材については,特に内部空間において,素材の統一化により空間の均質化と一体性がつくり出されていたこととともに,架構については,様々な試行を重ねた結果,鉄骨造の特性をいかした長大なスパンの簡潔な架構システムへと移行したこと示した. ついで,配置構成と平面・立体構成の類型とその移行を考察し,以下の諸点を明らかにした.配置構成では,敷地の形状をいかして簡潔な導入をおこない,様々なプライバシーの確保法を用いて居室の開放性を保持している.公・私室の配置では,住宅の階数に関係なく,それらの形態や配置は簡潔な分離をとり,公室も私室も一体的な空間を創出していた.主公室の構成では,主公室により全体の一体性を持たせる傾向にあり,特に居間的空間で,配置構成の試行により一体的な空間をつくりだしている.立体構成については,立体的にも立面的にもやや複雑なものから,より簡潔,または天井面を延長した外部への志向性の高い立体構成と簡潔な立面構成を持つ作品へと移行していく. さらに,外部空間の構成と自然との融合手法の類型とその移行について,階数に関係なく外部への指向性が高く,外部空間に中間領域を持たせたものから,内部空間との一体化を意識した外部空間へと変化していることを導いた. 以上の調査分析から,コーニッグは地域性をいかすために直接的に外部に働きかける規格化された住宅から,簡潔な規格化された形態のなかに地域性をとり入れることを内部空間で展開している,コーニッグの住宅作品における規格化と地域性の融合を論じ,彼の現代的意義を明らかした.
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