Research Abstract |
低速陽電子線を用いて高精度の熱平衡実験を行い,単結晶Siの熱平衡欠陥や不純物との相互作用を研究することが本研究の目的である.上記を達成するため,本年度では,1500℃程度まで均熱性が高く,高精度の温度コントロールが可能な赤外線炉を開発した.従来,赤外線炉を超高真空中に構築し,ミラーを用いて赤外線を試料に照射し試料温度を上昇させていた.この手法では,温度上昇に伴い,試料表面から蒸発したSiがミラーに蒸着されることにより,ミラーの汚染が生じていた.汚染が起こることにより,ハロゲンランプへのより多くのパワー投入が必要とされ,結果として,ミラー温度の上昇,ミラー部分の損傷が生じていた.この点を改良するため,試料周辺を石英部品によりカバーすることにより,ミラー汚染を防ぐことに成功した.この場合,石英そのものの温度も上昇しているため,石英へのSi蒸着はほとんど起こらず,長時間にわたって,安定した温度を得ることに成功した. 上記で開発した炉を用いて,ドープなしFz-Si,BドープCz-Si,AsドープCz-Siの熱平衡実験を行った,この結果,陽電子を用いて,Siの表面融解を検出できることを世界で始めて示した.熱平衡欠陥について,融点直下においても,その濃度は陽電子の検出限界以下であることが分かった.この結果は,陽電子で熱平衡欠陥を検出したとするいくつかのグループの結果とは異なり,実験条件,精度を考慮に入れると,本研究は既に報告された結果を修正するものであると考えられる.
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