1999 Fiscal Year Annual Research Report
ジルコニアの導電率における局所格子歪みの役割と弾性・擬弾性及び誘電特性との関係
Project/Area Number |
11750586
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
近藤 淳哉 岐阜大学, 工学部, 助手 (30301211)
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Keywords | 安定化ジルコニア / 導電率 / 単結晶 / 内部摩擦 / 誘電緩和 / 固体電解質 / 方位依存性 / インピーダンス スペクトロスコピー |
Research Abstract |
10mol%Y_2O_3安定化Z_rO_2単結晶の1273Kで時効前後の内部摩擦は、時効前はどの方位も広い温度範囲にわたる2つの重なったブロードなピークをもち、低温側のピークには明らかな方位依存性が、高温側のピークにはわずかではあるが、低温側とは逆の方位依存性が見られた。時効後は見かけ上一つのブロードなピークになり、明らかな方位依存性が見られた。それは時効前の高温側ピークと同じである。したがって、異なる対称性をもつ2種類の点欠陥対が存在する結晶構造から、時効により1種類の対称性の点欠陥対に変化したと考えられる。したがって、時効により格子歪みの異方性を緩和が起こっていることが分かった。方位ごとに見ると、[111]が時効により最も激しいピークの減少を示し、[211]と[311]は減少が小さかった。インピーダンス・スペクトロスコピーを行った結果、誘電緩和分散には明らかな方位及び時効依存性がみられた。注目すべきは、時効前の電気抵抗が方位によって異なり、通電方向が[110],[311],[111]方向の試料の電気抵抗はほぼ同じであり、最も低く、[211]が最も高かった。時効後は、方位因子の値が近い[110],[211],[311]が全く同じ電気抵抗と波形を示し、電気抵抗は最も低くなる。[211]は若干の減少を示している。安定化ジルコニアは時効により抵抗率の上昇を示すことが知られているが、単結晶においては上昇を示さない方位が存在することを初めて示したものであり、注目に値する。多結晶のYSZにおいて、時効による内部摩擦の減少が大きいほど抵抗値の上昇が大きいことをすでに報告しているが、単結晶においてもその傾向がみられた。時効による内部摩擦の減少が最も小さい[211]の抵抗率が変化しないのは、その方向の局所構造の変化がほとんどないことを示していると考えられる。詳細の多くは来年度の研究課題ではあるが、時効により導電率の低下しない方位が存在することと、群論が教えるところから本来方位依存性を示さないはずの立方晶ジルコニアの導電率に方位依存性が存在すること、といった重要な知見が得られた。これは、[211]方向に配向させた安定化ジルコニアや[211]方向の単結晶を用いることにより、時効により導電率の低下しない固体電解質として工業的にも実用可能な非常に重要な知見である。
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