2000 Fiscal Year Annual Research Report
天然繊維屑によって複合化した生分解性プラスチックの強度特性および生分解特性
Project/Area Number |
11750609
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
伊藤 隆基 福井大学, 工学部, 助手 (40242581)
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Keywords | 高分子材料 / 生分解性プラスチック / FRP / 引張強度 / 疲労強度 / 繊維廃棄物 / リサイクル |
Research Abstract |
生分解性プラスチックは原材料の価格が従来のプラスチックの3〜5倍と高いことから,需要および用途が伸びていないのが現状である.現在流通している生分解性プラスチックは通常の同類プラスチックと同等の強度,剛性率を有しているが,需要および用途拡大のためには高強度化および高機能化が必要である.一般的にプラスチックの強度向上を目指す場合には強化繊維との複合化が考えられるが,生分解性プラスチックについても天然繊維で複合化することにより生分解性を失わずに複合強化が実現できる.一方,繊維産業では多くの繊維廃棄物が生じ,生分解性を有する繊維不織布製造工程においても多くの裁断屑が生じている. そこで,繊維廃棄物の再利用と生分解性プラスチックの高強度化の試みとして,強化材としての天然繊維屑と熱可塑性の生分解性不織布屑を同時に成形機に投入することによる繊維強化複合材料の射出成形法を考案した.さらに,不織布裁断屑である生分解性プラスチック(ポリブチレンサクシネート,PBS材)および綿糸によって複合強化したPBS(PBS/CO材)の生分解試験,静引張および疲労試験を実施し,各試験結果および試験後の微視的観察からPBS材とPBS/CO材の生分解特性および強度特性を明らかにした.その結果,綿繊維屑による複合化は引張強さや剛性率を大きく増加させるが,逆に生分解性(分解速度)を著しく加速させるとともに強度も低下することが分かった.生分解速度の増加は,廃棄物の処理に対しては有効であるといえるが,生分解が使用中に同時進行するような環境下では強度的にはそれが欠点となる.強度低下の原因となる生分解速度の増加は,材料表面から進行する侵食がき裂の発生・成長を助長させるとともに,水分の浸透により生分解が試験片内部から生じることに起因しているとことが分かった.しかし,その点についてはまだ十分には解明されていないことから,今後の課題として繊維複合化による生分解速度の増加のメカニズムを明らかにすることは,生分解性プラスチックの用途拡大を図る上での基礎データとなり,強度保証の点からも必要である.
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[Publications] 木村照夫,片岡芳明,近藤幸江,高橋哲也,伊藤隆基: "綿繊維屑を強化材とした生分解性プラスチックの生分解特性と引張特性"日本機械学会北陸信越支部 第36期総会講演会論文集. 997・1. 105-106 (1999)
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[Publications] 伊藤隆基,小幡谷洋一,荒木敬造,木村照夫: "綿繊維屑を強化材とした生分解性プラスチックの引張および疲労特性"日本機械学会北陸信越支部 第36期総会講演会論文集. 997・1. 107-108 (1999)
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[Publications] 伊藤隆基,木村照夫,荒木敬造: "綿繊維屑で複合強化した生分解性プラスチックの強度特性および生分解性特性(コーティングによる生分解速度調節に関する一考察)"第43回材料力学研究連合講演会講演論文集. 99・16. 363-364 (1999)
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[Publications] 伊藤隆基,木村照夫,荒木敬造: "綿繊維屑強化生分解性プラスチックの生分解速度調節に関する-提案"溶接構造シンポジウム'99講演論文集. 526-529 (1999)
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[Publications] T.Itoh,T.Kimura,K.Araki: "Property Change in Strength of Biodegradable Plastic Reinforced by Waste Cotton"16^<th> Annual Meeting of the Polymer Processing Society (PPS-16). (2000)
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[Publications] 伊藤隆基,荒木敬造,木村照夫: "綿糸を強化材とする生分解性プラスチックの生分解による強度特性の変化"日本機械学会論文集 A編. 66・648. 1555-1560 (2000)